※さしこう全店臨時休業の為、2016年に公開した記事の再アップです。
【連載】 「イラン・大自然の絨毯に出会う旅2016」第六回
4日目(前半)
イスファハンのアバシホテルで朝目覚めると、さっそく美術館のようなこのホテルを散策。
エントランスから待合所、レストランや天井に至るまで全てが豪華絢爛。
美しい調度品や珍しいペルシャ絨毯にとうっとりしながら、
後ろ髪引かれる思いで、8時にはホテルを出発。午前中は世界遺産であるイマーム広場へ。
サファビー朝(1501~1736)の首都であったイスファハンの中でもイマーム広場は中核の場所。
かつて「世界の半分はここにある」と言わしめた程の美しいモスクや
大規模なバザールが広がっています。ここだけでもじっくり見れば1日以上かかります。
まずは広場の中心的存在イマーム・モスクの中へ。
う~ん。これにはやられました!柔らかなドームの曲線や鮮やかなブルーのタイルは、
イラン芸術の最高美にして、見るものをただちに虜にしてしまうほどの美しさ!
見れば見るほどため息しか出ません。
吸い込まれそうなブルーの誘惑に踏ん切りをつけ、イマーム広場を少し歩きます。
少し歩いた先にはペルシャ絨毯の工房「ハギーギー工房」がありました。
栄華を極めたこのイスファハンもアフガンの侵入を受け、街は破壊された経緯があります。
そして、絨毯産業も長い間停滞を余儀なくされましたが、このハギーギー工房の復興と共に
街も再生し、徐々に活気を取り戻してゆきます。
時代の煽りを受けながらも力強く歩み続けたハギーギー工房は、緻密で色鮮やかな
ペルシャ絨毯を作り、現在もイスファハンの有名工房として地位を確立しています。
まずはハギーギー工房の美しいペルシャ絨毯を見せてもらった後は、工房見学。
こちらは作製中のデザイン画。デザイナーが図案を線描きし、彩色していきます。
このデザインの段階では文様や色をざっくりと入れていきます。
次にデザインが出来上がると細かな正方形の目の入った意匠紙に色を入れていきます。
正方形のマスひとつひとつに違う色を入れる細かい作業です。
色付けが完成するとこの意匠紙を見ながら、織子さんが絨毯を織っていきます。
一方、遊牧民が織るギャッベはもともとこの意匠紙がありません。
意匠紙が無い故に、織子の感性と経験によってのみ織られる素朴さがあるのです。
話を戻して、続いてはペルシャ絨毯の織り工程へ。
写真上に見えるのが先述した意匠紙。
縦糸に草木染めした糸を一つ一つ結んでいきます。とても気の遠くなる作業です。
こんな美しい文様も!素晴らしい技術ですね。
縦糸に結ぶパイル糸もこんなにたくさん色の種類があります。
そして、何か月も何年もひたすらこの細かい作業を繰り返して、
完成したのがこのようなペルシャ絨毯です。
何人もの技術を極めた専門家たちと織子さんの緻密な作業によって、
途方もない時間をかけた一枚のペルシャ絨毯が完成します。
私たちはこの伝統ある技術と手間暇をかけた絨毯を扱わさせていただいている
誇りと責任を持ち、それ相応の知識を持って皆様にご紹介しています。
ペルシャ絨毯の知識は中東の歴史からはじまり、素材・染め・デザイン・織り・仕上げなど
それぞれの専門的分野の奥深くまで学ばなければなりません。
奥深いからこそ面白くもあり、みなが真剣だからこそ感動が生まれると信じています。
しっかりとペルシャ絨毯の工程を堪能して、さらなる目的地へと向かいます。
つづく
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