壷には『世の中で一番取り扱いの危険なもの』と、書いてあった。
その下に『貴重なので大切に』とも、書いてあった。
中を覗き込むと『愛』があった。
そのいろいろな形と色をした何種類もの愛たちは、壷の中で所狭しと動いていた。
じっと見ていると、とても綺麗だった。
同時に何とも言い難い息苦しさを少し感じて、急いで蓋を閉めた。
ずっとこの壷を探していたはずだった。
なのに今、この16階のベランダから地面に向かって投げつけたい気持ちも否めなかった。
レースのカーテンを押して、あどけない風が部屋に入った。
少し脳が洗い清められると、やっぱり欲しかったんだよ、愛、と思った。
静かに立って、壷をクローゼットに押し込んだ。
《おわり》