名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(356); 向い飛車に65歩急戦

2016-12-02 | 大山将棋研究
昭和52年6月、加藤一二三先生と第4回名将戦です。


大山先生の向い飛車、加藤先生はおとなしい受け方で、当時はこれが常識です。今はこの歩を突かないですませようという工夫があります。

57銀を見て加藤先生は桂を跳ねる、棒銀ではありませんね。

変わった仕掛けを狙います。

シンプルに桂を跳ねて

22玉の形が嫌ですが、67歩は気持ちよいです。ここで68角か69角か79角かと考えましたが、73角61飛62歩で桂馬を取られるのが嫌なんですね。

33角には55歩同歩73角。これで振り飛車が十分指せている感じがします。

56歩62角成66角53馬に57歩成。すごいことになりましたが、妥協はやりにくそうです。

その後大山先生は52馬同金41銀、22玉をとがめています。

角と金2枚の交換となり、大山先生がかなり得をした感じではあります。それで優勢かというと

88飛に56金が強い手で好手、と思ったら48飛成に66金は39銀同金同竜同玉48金で後手が勝ち?同玉57角47玉66角成36歩でまだ難しいのですか。
48飛成には同金同角成49金もあって、そこでどう指すか難しいです。57桂成は48金同成桂66角で抜かれます。角を打ってつなぐのですかね。

実戦は48角成同金89飛成で、これなら大山先生が良いでしょう。48同飛成に66角を見落としたというわけでもないのでしょうけど、不思議なやり取りです。

加藤先生は粘りに出ますが、駒損なのでこれでは不利です。

53同金にどうやるか見えないのですが、54歩なら52金同飛成41銀打で粘れます。

加藤先生はこの角打ちが攻防に見えたということでしょう。

この歩が敗着。73銀と打てば先手の勝ち方がわかりません。竜を逃げれば57歩です。

角を取らせたのでこの角が詰めろになって

投了図。


見たことのない仕掛けでしたが、振り飛車が良いのだと思います。でも終盤は何度か加藤先生にチャンスがあったはず。
後手をもって終盤を研究してみてください。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山棋聖
後手:加藤一二三棋王
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 5六歩(57)
4 8五歩(84)
5 7七角(88)
6 5四歩(53)
7 8八飛(28)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 3四歩(33)
11 4八玉(59)
12 6四歩(63)
13 3八玉(48)
14 4二玉(51)
15 6六歩(67)
16 3二玉(42)
17 2八玉(38)
18 5二金(61)
19 3八銀(39)
20 7四歩(73)
21 5八金(69)
22 4二銀(31)
23 5七銀(68)
24 7三桂(81)
25 1六歩(17)
26 1四歩(13)
27 4六歩(47)
28 5三銀(62)
29 4七金(58)
30 6二飛(82)
31 6八飛(88)
32 6五歩(64)
33 同 歩(66)
34 同 桂(73)
35 2二角成(77)
36 同 玉(32)
37 6六銀(57)
38 6七歩打
39 4八飛(68)
40 3三角打
41 5五歩(56)
42 同 歩(54)
43 7三角打
44 5六歩(55)
45 6二角成(73)
46 6六角(33)
47 5三馬(62)
48 5七歩成(56)
49 5二馬(53)
50 同 金(41)
51 4一銀打
52 3一銀(42)
53 5二銀(41)
54 4八と(57)
55 同 金(47)
56 8八飛打
57 5六金打
58 4八角成(66)
59 同 金(49)
60 8九飛成(88)
61 4九金打
62 4二金打
63 8二飛打
64 3二銀打
65 5四歩打
66 6八歩成(67)
67 5三歩成(54)
68 5二金(42)
69 同 と(53)
70 6四角打
71 6二飛成(82)
72 5九と(68)
73 3九金(49)
74 5七歩打
75 6四龍(62)
76 5八と(59)
77 4七金(48)
78 3五桂打
79 5三角打
80 4七桂(35)
81 3一角成(53)
82 同 玉(22)
83 4二銀打
84 投了
まで83手で先手の勝ち

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20161202今日の一手<その426>; 駒を打って受ける

2016-12-02 | 今日の一手
20161202今日の一手

10月29日の名南将棋大会から、MさんとAさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




一昨日の一手の回答

☆形勢判断をします。
角銀交換で先手の駒得です。
玉の堅さは後手のほうがかなり堅いです。
先手の攻め駒は(囲いに迫っているものだけ数えて)持ち駒飛角2枚。
後手の攻め駒は49銀と持ち駒飛で2枚。

総合すれば互角のようにも思えますが、少し駒得で玉の堅さがかなり違うので後手が指しやすいです。

☆ 大局観として
後手玉が堅くて寄せ合いにはならないので受けるしかありません。駒得でも食いつかれたら負けです。幸い後手の攻め駒は2枚、33桂や11香が攻め駒になるのは難しい(77角の利きに入っている)のは心強く、64銀や56歩(が と金になる)を使われないように受けておくしかないところです。また、後手に飛車を打たれて89桂や78金など自陣の駒を取られるというのも避けなければなりません。

問題図の前に

先手玉が薄いので作戦負け、そこで自分から動いていったのが疑問手です。少しでも玉を固めておいて、後手が無理に動いてくるのを待つしかないところでした。
角銀交換が無理だった、ということにできれば別です。問題図で後手の攻めは少し無理だったと思わせるような受けの手を探しましょう。
作戦負けの時は自分から動くと早く負けるというのは覚えておくとよいです。この裏で、作戦勝ちで相手に無理に動かせて勝つのが理想とも言えます。
前の図から、55同歩同銀64銀66銀引

57角成同飛(同銀は58歩から69銀の筋)同飛同飛成同銀56歩48銀49銀で問題図になるのですが、後手としてはそんなに急がないで65銀とか、46歩同歩同角とか、15歩同歩17歩とか、15歩同歩同香とか、有利になりそうな手はいろいろありました。

もう一度問題図。


× 実戦は33角成でした。

これは一目悪手です。駒得を拡大しても寄せられたら負けなのです。入玉のために上部の駒をさらいに行った、という意図なら別ではありますが、先手玉を薄くされるので急ぎ過ぎです。
38銀成同玉57歩成

取れば58飛ですね。実戦は59銀と引いて粘り後手が間違えたので、玉を上部に逃げ出す展開まであったのですが、結局寄せられてしまいました。


△ 自然な守り方は39金ですが、58銀成

とされて57歩成があります。79角と受けても69飛59歩に57歩成

とされて、58歩には48と同金39銀

38玉48銀成同玉29飛成

これは後手の攻め駒が増えたので勝ち目がありません。

戻って57歩成を同銀と取って

57同成銀同角89飛成79飛69銀

という手筋を食らいます。これも後手が優勢です。

ということで悩みます。58銀成の時に59歩

として、48成銀同金57銀49銀・・・と金銀の打ち換えで千日手を狙うくらいしかありません。
後手は69飛79飛同飛成同銀を途中で入れてこの形にして

67金から角取りと57歩ねらいで少し指せそうです。見つけられたら仕方なし。


△ 57歩成を受ける必要があるとわかりました。51飛は攻防ですが、53飛と合わされます。

53同飛成同銀の時に他の手を探せば悪い取引でもないのですが、51飛とすると38銀成同玉57歩成同銀58飛

では悪いです。

57歩成の時に53飛成として

28金同玉48と

これも後手が有利でしょう。


△ 59飛が受けの手で

57歩成に対応しやすいです。38銀成同玉57金には58歩

と打てるので、後手の攻め駒は2枚から増えません。

59飛に58飛があって、68角打ちで大丈夫かと思ったのですが

38銀成同玉28金同玉48飛成38金に57歩成

で困っています。57同飛は39銀、57同角は78竜、48金は同と です。

ということは58飛に同飛同銀成59歩

で千日手ねらいしかありません。これは問題図で39金と同じ変化になります。打開してやや後手よしです。


× 39飛は

38銀成同玉57歩成

で58飛があるのでだめです。


△ 79飛なら

78金にひもがついています。38銀成同玉58金68銀

48金同玉57銀同銀28飛

で少し困っていて、38金合い(銀合いでも)に57歩成39玉38飛成同玉

は後手が有利、攻め駒が増えました。

合駒をせずに39玉

78飛成同飛57歩成33角成

として入玉を狙うほうがまだ紛れそうです。後手は大駒がないので案外難しそう。


× 68金の受けは

38銀成同玉79飛に78銀で受かる

と思ったら57歩成

で困っています。

78銀ではなくて69飛と合わせると、

69同飛成同金57金58歩48金同玉28銀

で桂香を拾われて悪いです。


○ ということで全部つぶれたようですが、68角打

が最善。38銀成同玉58金に59銀打

68金同金55角打同角同銀77角

という調子です。

☆ まとめ
問題図では33角成が目に映りますが、これは一目で切り捨てなければいけません。先手のA君は小学生、直線的な読みはとても早いのですが、そのままだと初段くらいで終わります。もっと強くなるには、枝葉の読みも取り入れるべきなのです。級位者のクラスでは、読みの速い少年は持ち時間がいらないくらいなのですが、有段者のクラスまで強くなると(読みが速いにしても少しは)時間を使って、第2第3の手の変化を読むようになります。
形勢が良ければ自然な指し手が好手になりやすいので、少年ならあっというまに勝ってしまうわけですが、形勢が悪い時には不自然に見える手も取り入れなければいけなくなります。自然な手ばかりでよいとはいかないのです。
33角成38銀成同玉57歩成同銀58飛、自然な手のやりとりでも両取りでだめですね。57歩成の時に気がついても遅いのです。

経験を積むと33角成では負けそうだ、とすぐにわかります。自玉が薄すぎる、なにかうけるべきだと思うわけです。
39金や68金は番面にある駒を活用するので、攻める時には有効な考え方なのですが、受ける時には持ち駒を使うほうがよいのです。盤上に受けの駒の数が多いだけでも相手が攻めにくくなります。

飛角しかないので、自陣飛車か自陣角か。私の第一感は59飛で、感想戦の時に飛車を打って粘りましょう、とアドバイスしたのですが、今調べてみて58飛と合わせられるのは厄介です。

後手としては56歩が働くどうかが、攻めが続くかどうかの境目です。57に駒を打ち込むとか57歩成とか。残念ながらきれいに決まっていました。

39飛でも78金が浮くので後手の攻めが続き、79飛は有力ながらやや悪いか。

自陣角で68角打もかなり不自然な手ではあるのですが、こういう時は駒の数が多い方が良いです。それで互角、局面が落ち着けば駒を取る手は残るので指しやすくなりそうだと思います。

59飛、39飛、79飛、68角打の比較は かなり難しいので指運かもしれません。


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