名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(366); 四間飛車に右46銀

2016-12-12 | 大山将棋研究
昭和52年7月、土佐浩司先生と第16期十段戦です。
土佐先生は私と同郷なので昔から注目していたのですが、まだデビュー2年目で十段リーグ入りです。(6人しかいない最難関。)谷川先生と同じころにプロになり、どちらも浩司なので天才の名前か、と当時は書かれたものですが。


大山先生の四間飛車で、土佐先生は位取りか

とみせて、右46銀の急戦です。

57銀左が珍しい形ですが、仕掛けは3筋で

位を取って準急戦を目指します。

大山先生は反発

銀を追い返します。

袖飛車にするのはいかにも大山先生ですね。受け方は66銀や69玉もありますが

手堅く77歩でした。

土佐先生は65歩に元気よく同銀としたので角の筋が受けにくくなり

と金を作っても香の犠打があって

桂損です。

それでも銀が2枚前に出ているので攻撃力はあります。金を引けば64香でしょうか。

銀交換で銀を打つ、これは駒損が広がります。

銀銀桂と飛の交換ではまずいですね。後手玉が薄いので今のうちに攻めるしかありません。

大山先生は強気の受けですが、飛車を切られます。

ここから土佐先生が力を出します。飛車にひもを付けて

銀を打ちあいます。

清算して53歩、うるさい攻めです。

74桂まで実現したら逆転しています。

大山先生は金を捨てて上に逃げだそうとします。

44飛も桂を消去して上に逃げだそうという手。でも飛車打ちは厳しいです。

土佐先生は金を取るのもありましたが銀のほうを取って横から攻めます。と金を作れば優勢のはず。

64銀が上部を抑えての飛車取りで決め手に近いです。でも大山先生の角打ちもハッとしますね。

銀を打って受ければまだ大変かとも思えますが

角飛と取って、土佐先生は駒損を回復、攻め駒は十分、自玉も堅いです。

大山先生は馬を活用しますが、また53歩が手堅い攻め方で

63角から銀を取ればもう一息。

大山先生は87香成から王手飛車ですがひもがついているので逆転はなく

形作り。

角銀だけですが詰みがありました。

土佐先生の将棋は早見えの天才と言われます。メジャーな定跡の形は少なくて、乱戦を好み、そのなかで本筋の手が見える、という才能があります。成績は安定しなかったのは、切れ味を見せる時とポカで終わるときがあったから。手が見えるので相手に粘られて嫌になって負けることが多かったのかなあ、と思います。
本局は序盤は失敗しているのですが、大山先生の63銀を見て飛車切りからうまく攻めました。相手が大山先生なので一発で決まらないのですが、しっかり寄せました。
大山先生の94手目63銀と打ったのが悪いのかと思ったのですが、42飛があるので応手が難しいのです。後に74香があるので後手がよくなるのは大変なんですね。
ということはもう少し戻って、54で銀を交換したのがまずくて、52金引きですか。一見して桂得で馬を作り大山先生が良く見えるのですが、左の銀桂が残っているので形勢は互角、駒損でも攻めが続けば先手有利、なんです。土佐先生恐るべし。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:土佐浩司4段
後手:大山棋聖
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4三銀(32)
9 6八玉(59)
10 4二飛(82)
11 7八玉(68)
12 6二玉(51)
13 9六歩(97)
14 9四歩(93)
15 6八銀(79)
16 7二銀(71)
17 5八金(49)
18 7一玉(62)
19 5七銀(48)
20 5二金(41)
21 2五歩(26)
22 3三角(22)
23 3六歩(37)
24 8二玉(71)
25 4六銀(57)
26 3二飛(42)
27 5七銀(68)
28 5四歩(53)
29 1六歩(17)
30 6四歩(63)
31 3五歩(36)
32 5三金(52)
33 3四歩(35)
34 同 銀(43)
35 3五歩打
36 4三銀(34)
37 3七銀(46)
38 3四歩打
39 3六銀(37)
40 3五歩(34)
41 同 銀(36)
42 5一角(33)
43 3八飛(28)
44 3四歩打
45 4六銀(35)
46 7四歩(73)
47 6八金(69)
48 6三銀(72)
49 5五歩(56)
50 同 歩(54)
51 同 銀(46)
52 5四歩打
53 4六銀(55)
54 7五歩(74)
55 同 歩(76)
56 7二飛(32)
57 3五歩打
58 7五飛(72)
59 7七歩打
60 4五歩(44)
61 6六銀(57)
62 7二飛(75)
63 4五銀(46)
64 6五歩(64)
65 同 銀(66)
66 7三角(51)
67 3四歩(35)
68 1九角成(73)
69 3三歩成(34)
70 3二香打
71 同 と(33)
72 2九馬(19)
73 3六飛(38)
74 3二銀(43)
75 5五歩打
76 1八馬(29)
77 9七角(88)
78 7五歩打
79 4六飛(36)
80 5五歩(54)
81 5四歩打
82 同 銀(63)
83 同 銀(65)
84 同 金(53)
85 6三銀打
86 4五金(54)
87 7二銀成(63)
88 同 金(61)
89 6六飛(46)
90 6四歩打
91 7四香打
92 7三桂打
93 6四飛(66)
94 6三銀打
95 同 飛成(64)
96 同 金(72)
97 5二飛打
98 7二飛打
99 5三歩打
100 4一銀打
101 6一銀打
102 6二飛(72)
103 同 飛成(52)
104 同 金(63)
105 5二歩成(53)
106 同 銀(41)
107 同 銀成(61)
108 同 金(62)
109 5三歩打
110 5一金(52)
111 7三香成(74)
112 同 桂(81)
113 7四桂打
114 7二玉(82)
115 5二銀打
116 7一銀打
117 7五角(97)
118 4四飛打
119 3一飛打
120 7四飛(44)
121 3二飛成(31)
122 6二金(51)
123 5一銀(52)
124 6一歩打
125 5二歩成(53)
126 7五飛(74)
127 6四銀打
128 5四角打
129 6二と(52)
130 同 歩(61)
131 5二龍(32)
132 6三銀打
133 5四龍(52)
134 同 銀(63)
135 7五銀(64)
136 1七馬(18)
137 6四銀(75)
138 8四香打
139 7四金打
140 6一桂打
141 5二飛打
142 4四馬(17)
143 5三歩打
144 4三馬(44)
145 6二銀成(51)
146 同 銀(71)
147 6三角打
148 7一玉(72)
149 5四角成(63)
150 8七香成(84)
151 同 馬(54)
152 同 馬(43)
153 同 玉(78)
154 4三角打
155 7六香打
156 5二角(43)
157 同 歩成(53)
158 7九銀打
159 7二銀打
160 同 玉(71)
161 7三銀成(64)
162 同 銀(62)
163 同 金(74)
164 同 桂(61)
165 6一角打
166 8二玉(72)
167 7一角打
168 投了
まで167手で先手の勝ち
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20161212今日の一手<その431>; ある右四間飛車のねらい

2016-12-12 | 今日の一手
20161212今日の一手

11月26日の名南将棋大会から、NさんとHさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答
少し前から。

三間飛車に右四間飛車で仕掛けたところです。実際にも先手番で、26歩を省略できて、94歩を手抜いて、後手はまだ美濃囲いに収まっていません。だから条件は良いのですが、反面後手の陣形が低いので大きな戦果(取る駒がない)は得られません。抑え込んで指そうというくらいの気持ちです。
45同歩同銀88角成47歩

この歩を取ると28角と打たれて駒損になります。
28飛71玉で問題図。

☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は持ち駒角1枚。
後手の攻め駒は持ち駒角1枚。

総合すれば後手が指しやすいです。

☆ 大局観として
このまま駒組みをしても後手玉より堅くはなりません。代償は47歩を取ることで、実は1歩得が狙いで、ゆっくり指して47の歩を取りたいのです。後手は歩切れなのでこの歩を取るのは大きいはず。
どうやったらゆっくりできるか、ということを考えます。
この将棋は検討していて、でも久しぶりに指したので飛車の位置を間違えています。28飛ではなく18飛とかわしておくべきだったのですが、忘れていました。後手が71玉としたところなのですが、すぐにでも36歩同銀同飛同歩46角というのだって成立しそうなのです。まずはその筋を避けねばなりません。


× 実戦は71玉にほっとして58金右と自然に指したのですが

42飛56銀39角

打たれるまでわかりませんでした。ポカです。48歩成を受けられません。18飛48歩成68金右38と

と金は47と~46と と引いて使えば後手が優勢です。後手は66角を気にしたのですが、角が移動すると57と もあるので問題なし。

こういう図です。

戻って以下は38飛49飛成39飛同竜66角と進み


飛角交換だけなので、玉の堅さがが違うから悪いのですが、悪いなりにも勝負です。ただし逆転はなく負けました。

58金右42飛の時に44歩

とすると33桂が嫌で(この筋を71玉のところで考えていた困ったなあと思っていたのです。喜んで58金右としてしまった次第です。)34銀44飛33銀成39角

はやはり悪いです。(39角は気が付いていなかったのですが、桂得でも成銀が遊ぶので自信なし)

33桂には56銀ですね。

44飛47銀46歩56銀32銀

これは振り飛車が十分です。46の歩をうまく取ることもできません。

となれば、残りは42飛に46歩で

33桂56銀46飛47金41飛46歩32銀

これは一応互角なのですが、1歩得にはならず、作戦負けです。


× 56銀では

36歩同歩46角

まったくだめです。


× 44歩は

36歩同銀同飛同歩46角も気になりますが、(42飛58金22銀47金33銀66角22角と進んで)

44の歩を支えきることができないので、これも作戦負けです。


○ 58金左なら

右翼が手厚くなります。42飛に56銀

これなら47の歩を取れます。1歩得にしてこの後の駒組みです。28飛のために乱れましたが主張があります。


△ 65角もありそうですね。

後手は飛角交換でも構わないと思えばいろいろな指し方があるわけですが、22飛と逃げれば44歩42銀34銀

64歩43角成というのもありそうです。54角なら同角同歩41角

12角52角成同衾43金

これは次の24歩が良い感触なので後手が少し良いのでしょう。

また、65角に42飛として

21角成45飛31馬

で48銀を打たれてどうするか、というような変化も考えられます。

こういう順は角銀だけで攻めているのでとがめられそうなのですが、相手が級位者なら攻めているほうが勝ちそうにも思えます。



作戦負けの時にはちょっと変わった手を考えるといいかもしれません。玉が薄くなるので58金左は不自然な手なのですが、たまに出てきます。隙を作らないようにして1歩得(のような主張)を目指すのです。

この作戦としては18飛と逃げるのが筋で、26歩省略が生きています。(もちろん先に58金右としておいて、47歩に同金というのもあるのですが、それは36歩同歩同飛で39飛成がある、ということなんです。)

こういう形です。47銀~48飛~46歩~56銀~45歩という感じで指します。
この図は49角には16角で何とかなります。48角にも28角か。そういうマニアックな作戦でした。
もちろん後手が47歩を打たなければ派手に攻めようと思っています。


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