名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(448);四間飛車に居飛車穴熊

2017-03-04 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

後手番加藤先生の次の手は?


☆ 今日の棋譜

大内先生が76歩に84歩だったので、大山先生が四間飛車に。

大内先生は穴熊党総裁ですから、居飛車穴熊に。

このころから44銀から固める穴熊が多くなっているのですが

素直に組み合うと52の金を寄せられないです。52金右を保留して組むようになったのは、アマチュアが先か田中寅彦先生が先かはよくわかりませんが、もう少しあとでしょうか。

大内先生は金を寄せるために75の歩を交換し

うまくいったようなんですが、55銀は狙い過ぎです。大山先生は飛車を使い

かなり軽い形です。大内先生の飛角銀が重すぎます。

それでも後手の陣形はだんだんに整っていきますが

やはり大山先生の形がいいですね。

このあたりから難しくなります。86飛があるけれど、54歩ではないかな、と思うのですが

大山先生は77桂と跳ねて86飛に備えたら、75歩?

銀をぶつけられました。この図でいろいろありそうです。55角75銀同飛同角82角成は先手よし、ではないですね、後手が寄せあい勝ち。64歩75銀同飛64角71飛成86飛は互角ですが後手もち。銀をかわす手はないので、84同銀が本譜。

なんですが、55角は危ないです。85桂だったか。

というのはこの角は取られてしまうからで

先に桂を取って居飛車持ち。

桂を取り返しましたが、香を先に取られました。さて、ここです。54桂とか41銀とか54歩とか、怖くても寄せあいを考えるのが普通です。

大山先生は57銀から56歩と後手を引いて守ったのが、今は駒損ですからうまくないはず。

91香を取れなくなっても桂を打ってよし、と見たのですが

銀と桂香の2枚換え。穴熊は薄くなりましたがまだ攻略できません。後手の攻め駒が増えてしまったので受けにくくなっているのです。46銀は54桂からがりがり削られるのでしょう。

また駒損で受けに回ることになり

竜を引いて頑張ります。

59馬に48金左がおかしかったか、桂頭を攻められて

香を走られたら負けです。同銀に36桂を食らって

投了図。

形勢は難しいはずなのだけど、居飛車穴熊のほうが勝ちやすい、という将棋です。対等で駒を取り合っての攻防は振り飛車が勝ちにくいので、なにか主張しておきたいです。中盤では54歩と垂らして と金で攻める、左桂を85に逃げておく。終盤では2枚竜が生きているうちに寄せがなかったか。せめて91竜と香を取って受けることはできなかったか。
本譜は駒損で後手を引きつつ受ける、という手に賛同できません。26桂から34桂も、銀1枚を剥がしても、渡した桂も利用されるのですから効果はなく、26桂から15歩のほうがましか。最後は強襲を食らってしまいました。

勝った後手をもって並べるほうが楽しいのですが、先手をもってこうやったらいいのになあ、と思って並べてしまいます。大山先生はまだ居飛穴に対する感覚に戸惑っている感じがします。振り飛車穴熊に対する時とは少し違うのです。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.30 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山十五世名人
後手:大内延介8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 1四歩(13)
13 1六歩(17)
14 5四歩(53)
15 2八玉(38)
16 5三銀(62)
17 6七銀(78)
18 3三角(22)
19 5八金(69)
20 2二玉(32)
21 4六歩(47)
22 5二金(61)
23 4七金(58)
24 8五歩(84)
25 7七角(88)
26 1二香(11)
27 3六歩(37)
28 1一玉(22)
29 3七桂(29)
30 4四銀(53)
31 3八銀(39)
32 4二角(33)
33 8八飛(68)
34 2二銀(31)
35 2六歩(27)
36 3一金(41)
37 2七銀(38)
38 7四歩(73)
39 3八金(49)
40 9四歩(93)
41 9六歩(97)
42 7五歩(74)
43 同 歩(76)
44 同 角(42)
45 6八角(77)
46 5五銀(44)
47 7八飛(88)
48 7四歩打
49 7六飛(78)
50 7二飛(82)
51 5六歩(57)
52 6四銀(55)
53 4五歩(46)
54 4二金(52)
55 4六角(68)
56 8四角(75)
57 7八飛(76)
58 5一角(84)
59 6五歩(66)
60 7三銀(64)
61 5五歩(56)
62 同 歩(54)
63 6六銀(67)
64 8二飛(72)
65 7六飛(78)
66 8六歩(85)
67 同 歩(87)
68 3二金(42)
69 2五歩(26)
70 4二角(51)
71 7七桂(89)
72 7五歩(74)
73 同 銀(66)
74 8四銀(73)
75 同 銀(75)
76 同 飛(82)
77 5五角(46)
78 5四飛(84)
79 5六飛(76)
80 5五飛(54)
81 同 飛(56)
82 6六角打
83 5二飛成(55)
84 7七角成(66)
85 7一飛打
86 9九馬(77)
87 8一飛成(71)
88 6六馬(99)
89 5七銀打
90 6五馬(66)
91 5六歩打
92 6四馬(65)
93 2六桂打
94 5一歩打
95 7二龍(52)
96 6五桂打
97 3四桂(26)
98 5三角(42)
99 2二桂成(34)
100 同 金(31)
101 5五銀打
102 5七桂成(65)
103 同 金(47)
104 7五馬(64)
105 6六歩打
106 7一歩打
107 7三龍(72)
108 3三香打
109 4七金(57)
110 8六馬(75)
111 4四歩(45)
112 同 歩(43)
113 7八龍(73)
114 5九馬(86)
115 4八金(47)
116 3五歩打
117 同 歩(36)
118 3六歩打
119 同 銀(27)
120 3五香(33)
121 同 銀(36)
122 3六桂打
123 2七玉(28)
124 4八桂成(36)
125 同 金(38)
126 6八金打
127 投了
まで126手で後手の勝ち


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20170304今日の一手(その472);有利な時には自然な手

2017-03-04 | 今日の一手
20170304今日の一手

2月19日の名南将棋大会から、私とAさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答
仕掛けのところから見てみましょう。三間飛車穴熊にたいして居飛車は古風な陣形です。

42角を見て仕掛けました。24歩同角45歩同歩同桂

24歩に同歩なら45歩同歩11角成33角21馬99角成77銀でしょうか。普通は45歩には42飛の対応だと思うのですが(だから24歩に同角とした)、後手のAさんは最後の45桂では11角成33桂というつもりだったのでしょう。ともかくかわったやりとりでした。
これなら後手は44歩と打ちますね。失敗かと思ったら22歩同飛97角

これで手がつながりました。45歩には31角成から21の桂は取れそうです。32飛53桂成52銀で問題図。

☆ 形勢判断をします。
先手の2歩損ですが(持ち歩がない)成桂を作っています。現在はやや先手の駒損。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は26飛97角53成桂で3枚。
後手の攻め駒は24角1枚。

総合すればやや後手もちです。

☆ 大局観として
駒がぶつかっているところで形勢判断をしても大きく変動することが多いので、駒の交換をして落ち着いたところで判断するほうがわかりやすいです。けれどここは考えどころ。有力な手は限られますが、先の展開が変わってきます。
方針としては
駒損を回復というか、駒得にして持久戦を目指す。
後手玉を薄くして一気に攻略する。
選ぶ手によって度合いが変わってきますが、どちらかの方向で進めるのか決めて、できれば少し先まで読んでおきたい局面です。その少し先の局面での形勢判断をどう考えるか、というのが大局観です。


△ 成桂が当たっているので、その他の手は24飛同歩

くらい。これで金か銀を取るなら、先に金か銀を取るのでも同じことになります。金か銀を取った後で飛車を切るかどうか考えるのが普通です。
違うとすれば42成桂に33飛

ですが、これはその後の有力な手がなさそう。少し指し過ぎです。


○ 取れるなら「大きなつづら」を取りたくなるもので、62成桂が一番自然な手です。

62同金と取り返されたところで、穴熊が弱体化していることもわかります。つまり玉の堅さが逆転したわけです。であれば攻撃続行、24飛同歩23角が勢いです。(問題図で24飛同歩を先にしたら、62成桂からこの図に合流すればよいです。)

22飛34角成53銀(31角成を防いだ)に23歩

42飛には43金なので、32飛43馬33飛

くらい。33同馬同桂53角成同金72金

と打ち込んで51飛が厳しく、先手優勢です。後手は金銀をもっていないので受けにくいのです。

また、23角ではなく23金

とすれば飛車が取れます。33飛同金同桂に飛車を打ち込んで、という指し方でも手数はかかりますが寄せ合い勝ちでしょう。桂歩歩と角の交換ですから戦力が違います。(歩切れですが後手は歩を打つ筋がない。)


△ 実戦では52同成桂と「小さなつづら」を取りました。

52同金は41銀があるので52同飛。桂歩歩と銀の交換では少し損ですから、(実戦では違いましたが)43銀51飛34銀成

と歩を補充して、角が逃げて23飛成か、角銀交換か、ということになります。どちらにしても先手のほうが駒得になりますから(この成銀を作ったところでも駒得)先手有利です。駒得で飛角が使いやすいのですから悪い理屈はありません。といっても穴熊は無傷なので、51飛を活躍させないことです。

実戦では43銀ではなく31角成

としました。持ち駒の銀を使うよりも筋はよいです。だけどすんなり21の桂をとれるわけはなくて、55歩同歩同飛56銀打(45飛を嫌った)51飛が馬取り。24飛

と切って、24同歩42馬に52飛

52同馬同金22飛51歩12飛成

大立ち回りで、桂歩歩と銀香の交換、持ち歩を手に入れました。玉の堅さも劣っていないですし、先手有利には間違いないです。
この後29飛に94歩同歩66角、と88角の筋を避けたら86桂

という攻め筋をうっかり。86同歩には87角ですね。79玉から混戦になり、先手が負けてしまいました。

66角では59銀

が受けの形です。これで寄せ合いなら先手が良かったでしょう。


○ 54成桂と引くのもあって

歩切れを解消、成桂を作った分だけ先手の駒得です。これで後手の手が難しいのです。35歩には挨拶しないで43歩

42歩成を避けて、53歩44成桂41歩88角

後手の36歩には33歩から36飛で十分です。成桂が存分に働くので先手有利。後手からの手段が乏しく、逆転しにくい局面と言えます。


△他の手は42成桂くらい。

42同角に同角成同飛23飛成

は桂損で竜を作っただけですが、12香の形が災いして、22歩なら12竜と取れます。43角と粘っても22歩から12竜があるので、駒損は回復します。であれば42飛を使いにくい分だけ先手が指しやすいと言えそうです。



☆ まとめ
先手Nさんの変わった作戦(古典定跡みたいな形)でしたが、端角と組み合わせてきれいに決まりました。53桂成までは鼻歌気分ですが、少し有利になったところで考えてみるともっと良い手が見つかるものです。
基本は有利な時には自然な手を考えることです。自然な手を組み合わせて勝ってしまう、若いころの中原先生は自然流と呼ばれましたが、それが王道です。

62成桂が一番自然で、駒得で相手玉を弱体化できるのですから、一石二鳥です。もう穴熊が薄くなっていますから、先手玉の囲い(4枚の舟囲い)のほうが堅いです。だったら飛車を切ってどんどん攻めてしまえ、と考えても無理がありません。

52同成桂はひねった感じ。後手からみたら、タダで取られそうな(43にいた)銀が成桂と交換できた(さばけたともいう)のですから希望が出てきます。それでも先手が悪くなかったのですが、舟囲いでの59銀の形(48に銀があったのを59に引くことが多い)は覚えておきたい受けの形でした。

私ならつい意地悪をしたくなって、銀を取ってくださいと引かれたら54成桂と逃げる手から考えてしまうのですが、その後成桂が十分に働くのですから、かなり良さそうな手です。成駒を引くのは働きが良くなるので(「金を引く手に好手あり」と同じことなので)、これも自然な手で、歩切れも解消できるのですから一石二鳥なのです。

その他、42成桂はひねった手ですが、悪くはありません。駒損をするのでその先まで十分に考えることです。自然な手以外にもよい手があることがあります。ただし比較に困ったら自然な手を選ぶほうが間違いがないです。


話は少しずれますが、スランプの時には不自然な手を考えてしまうもので、自然な手を心がけることでスランプ脱出しやすくなるのかな、と思います。なぜか連敗しているような時には、自分の将棋を振り返って、無理なことをして悪くなっていないか、と少し離れて観察してみると、だいたい当てはまるものです。


「自然な手」とは、駒を取る手、相手に取られるのを防ぐ手。駒の働きを良くする手、相手の駒の働きを悪くする手。この4つのうちどれかに当てはまる手のことです。大雑把に言えば、1つの項目に当てはまれば自然な手、2つに当てはまれば好手、1つに当てはまっても1つに外れれば平凡手あるいは疑問手まれに絶妙手かも。という分類です。
(駒を取ったけれどその駒が遊んでしまったなどが最後の典型です。)
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