今回突然始まったこの不定期連載「アルバムとC/W曲を語ろう」。これは、そのユニット(或いは個人)のヲタなら知ってるけれど、そうでないヲタには意外に知られていないんじゃないか?という曲を紹介していくものです。
第一回目の今回はBerryz工房の「蝉」について書いてみようと思います。
ハロプロの1stアルバムには名盤が多い。ヲタの間では、よく言われる定説です。松浦亜弥、ミニモニ。、藤本美貴、美勇伝、℃-ute、この辺りが特に良い1stアルバムでしょうか。
その良い1stアルバムに、これも加えておきたいのが「1st超ベリーズ」。Berryz工房の1stアルバムです。
実は、私がBerryz工房を好きになったきっかけがこの作品でした。アルバムが出たみたいだから、ちょっと買ってみるか!と軽い気持ちで買った筈が、次の日くらいには「Berryz工房良いね!」になっていましたよ(苦笑)。
当時はハロプロヲタ内でもBerryz工房に対しての風当たりは強かったのですが、それはメンバーに小学生がいるという事への抵抗感から来ていたものであったと察します。でも、楽曲は正統派アイドルポップスって感じで良い。なのに、メンバーの年齢で全てを拒否するのはいかがなものかと、アルバムを聴き終えた私は思ったものでした。
正統派アイドルポップスが詰まった一枚ですから、全体的に瑞々しい。青春真っ盛りみたいな世界観が全編に貫かれていて、非常にコンセプチュアルな一枚に思えたものです。最初から最後まで描かれている世界や、奏でられているサウンドにブレがなく統一感がある。
いや、嘘です。一曲だけおかしいのがありました。「あなたなしでは生きていけない」のリミックスバージョン。あれは制作者が遊び過ぎ。飛ばして聴く事が多いです。
リミックスはともかく、全体に貫かれている瑞々しい感じの中に、ちょっと憂いを感じる曲がありました。それが「蝉」。なんて読むのですか?という人いますか? 「せみ」と読みます。
この曲は、夏休みに田舎に遊びに行った。そこは普段の自分の生活とは違う世界が広がっていた。携帯の電波は圏外、山と川に囲まれた日々で、あなた(彼氏)の事さえも忘れてしまいそうになるほど異世界。という気持ちを歌った曲なのですが、楽しい筈の夏休みの田舎の日々を歌っているのに、どこか哀愁感のあるサウンドです。ベリメン達の歌声も他の曲と比べて弾け具合を抑えた歌い方。楽しい夏休みではないのか?
この「夏休みの歌なのに哀愁いっぱい」な感じが、この曲の一番の魅力であり特徴なのです。
青春真っ盛り路線のBerryz工房だから、楽しい夏休みだ!みたいな明るい弾けソングでも良い筈です。実はそういう曲も収録されています(恋はひっぱりだこ)。
しかし、明るい弾けソング一辺倒にせず、この「蝉」がアルバム後半に収められている事で、アルバムの作りが引き締まる効果を与えています。青春も夏休みも、楽しさと切なさが表裏一体。そして、楽しい時間だからこそ、ふとした一瞬の時に寂しさも感じるという、青春の心理を綴った歌が収録されているからこそ、このアルバムがただ明るいアイドルポップスアルバムには終わらず、リアルで生き生きとしたBerryz工房等身大な一枚になったのだと思います。
蝉 Berryz工房
今回の記事に貼った動画は、Berryz工房2005秋ツアー「スイッチオン」のステージ上に流れていたVTRです。後半戦の衣装チェンジの時に流れていました。
このツアーは石村舞波ちゃん卒業ツアーでもあった訳ですが、Berryz工房でデビューしてから一年半という短さで引退という道を選んだ舞波のアイドル人生と、地上に出てくると太陽の下での日々は短い蝉の姿を重ね、夏の終わりのような切ない想いを高ぶらせます。
実は、Berryz工房が、この「蝉」をあまりコンサートで歌わない事に、大切な一曲にしている事を感じられて、密かに嬉しかったりもします。そういう曲もあっていいよねと、そんな気持ちになる一曲です。
蝉/Berryz工房 アルバム「1st超ベリーズ」(2004)収録