昔から温泉に親しんできた日本では、温泉によって発展してきた町が多数あります。そしてその町にはお寺が建立され、旅館街が形成されてきました。そして、その町の地名には「湯」が付くところが多数見られます。感覚的にそういう町は真っ当な温泉に出会う可能性が高いような気がします。湯田温泉、湯本温泉など、山口県にはこのような「湯」のつく町が多いことに気づきました。平日2日間の連休が取れたある日、この「湯」のつく温泉巡りを実行することにしました。
限られた休暇で、しかも公共交通で多くの温泉を巡るためには、仕事が終わるや否や行動開始!大阪から山口方面には萩行きと下関行きの夜行バスが出ています。難波のバスターミナル、OCATから萩行きの近鉄バス「カルスト号」に乗ることにしました。
このOCAT、当初は関西空港へJRの快速が発着し、館内で飛行機のチェックインができる都心のターミナルとして作られた施設です。ところが、目論見とは異なり、航空利用者は少なかったようで、今ではチェックインの施設も撤去されてしまいました。その一方、バスターミナルとしては好調なようで、ここから全国に向けて長距離バスが頻繁に発着しています。バスは日野のセレガ。少しだけ阪神高速を走って梅田に到着、ここで10人ぐらい乗客を乗せて再び阪神高速へ。中国道に入ると前方のカーテンが閉められて消灯。高速道路の一定のジョイント音を聞きながらシートを倒したら、程なく意識が遠くなってきました。
車内がガサガサしたので目を開けたら、もうすでに岩国です。外はまだ暗いが、数人がここで降ります。再びウトウトしてるうちに徳山です。ここで運転士が交代します。この「カルスト号」、夜行バスながらワンマン運転なんですね。防府を過ぎて、7時半ごろ山口市に到着しました。
ここは山口県の県庁所在地。その中心街である米屋町でバスを降りたものの、驚くほどひっそりしています。朝食を求めて商店街を歩くが、ない…
駅に行けばありつけるかと思って歩いてみるが、そこにもない。てか人がいない。県庁所在地のわりにはショボい……いや、失礼。閑静な都市ですねw
ようやく1軒の純喫茶(まさしく純喫茶ですよ)を見つけ、そこでモーニングセットにありつくことができました。
山口市には市街地の中に真っ当な温泉の湯田温泉がある、ある意味うらやましい都市です。この旅の最初に山口市を訪れたのは、市内に早朝から営業している源泉掛け流しの銭湯、「清水温泉」があると聞いたからなんですね。
温泉を辞した後、再び山口駅へ。就業時間になった後でも相変わらずひっそり。道を歩く人たちもどこかのんびりしている。この町がこれほどのんびりしているのは温泉があるせいかもしれない。毎日、こんな上質な温泉に入ってたらアクセク働く気が失せてしまうのでしょうかね?山口から山口線のディーゼルカーで新山口へ。2両編成のワンマンカーが走ります。ひっそりとした町では、こんなローカルな列車が似合っていますね。とても県庁所在地とは思えないが…
新山口で山陽本線の電車に乗り換え、下関に向かいました。目的は下関日の出温泉です。下関に降りると、駅舎がありません。大きな三角屋根が名物の駅舎だったのだが2006年1月の放火による大火災で焼失してしまい、現在は仮駅舎になっています。日の出温泉は、事前のリサーチでは13時開店とのこと、時間つぶしに海峡ゆめタワーに登ることにしました。このタワーは関門海峡を一望できるとのこと。
雨天のためぼんやりしているものの、確かにいい景色。大河のような海峡と、巌流島や下関、門司の町並みが一望できます。
日の出温泉は下関漁港の近く、漁業関係の事務所が並ぶ中にポッカリ建っています。近づいてみると、何かおかしいぞ??人がいない…玄関先にお知らせがあり、14時開店に変更しているとのこと。ウーン、開店を待っていると次の俵山温泉に行くバスに間に合わない。この温泉に入るためにせっかく下関に来たのに残念!
下関駅前のバスターミナルから長門市方面へ行くサンデン交通の路線バスに乗り込みます。
車両は日野のHU。対岸の門司を見ながら関門海峡大橋の下をくぐり、城下町の長府へ。小月駅前でしばらく時間調整をして、ここから内陸へと向かいます。
川べりに桜が咲く、のどかな田園風景の中をバスはのんびり走ります。そのうちに、だんだん…眠くなって…きた……ぞ………「ゴン!!」
バスが揺れた拍子に窓ガラスに頭を打って正気に戻ると、いつの間にか山の中に入り込んでいます。小ぶりなダムを通り抜けると「天皇様」という変わった名前のバス停があります。しばらく進むと「安徳天皇陵墓」との看板と御陵らしき小山があり、バス停の名前に納得しました。が、あれ?!…安徳天皇って壇ノ浦の合戦で入水したはず。こんな山の中に埋葬されるってナゼ??
疑問は解けぬまま、程なく俵山に到着し、旅館街の停留所でバスを降りました。俵山温泉は、旅館の多くが内湯を持たず、湯治客はあまねく外湯に向かうという、温泉本来の姿を今に留めている、今や絶滅寸前の温泉街です。
ここでの宿泊は「亀屋旅館」。女将さんがミニスカートで現れるのには当惑するものの、部屋やトイレの整備も行き届き、布団もフカフカ。
また、この旅館の料理はなかなかのもので、鯛のあらの酒蒸しは特に美味!