とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

鈴木琢磨という青年

2013-01-14 22:46:37 | 日記
鈴木琢磨という青年




 
 岡田三郎助「夫人像」
 日本画らしい雰囲気を残した西洋画。私はこういう凛々しい女性像を描ける作者の力量の大きさを感じてため息が出る。

 翌日、冴子さんから電話があり、その演劇青年のすべてが分かりました。


 鈴木君のことですけどね・・・。

 鈴木君、・・・ああ、あの演劇青年のことですね。

 そうです、そうです、いい青年なんで私も大変乗り気になってきました。郁子さん、いや、郁子ちゃんと呼んだ方が言いやすいですけど、・・・当の郁子ちゃんも大変前向きで旨くいきそうな感じなんです。

 そりゃ、よかった。

 ご両親も正式な申し込みをしたいと仰っているそうです。

 ご両親はどんなお方ですか。

 お父さんの家は出雲の昔からの作り酒屋で、地元だけではなく県外にも出荷しておられるそうです。お母さんのご実家は和菓子作りの老舗で、和菓子の生産地の松江でも一、二を争う高い評価を受けているそうです。

 酒屋と和菓子屋ですか、それは旨い取り合わせですね。・・・ということは商売の跡継ぎということに・・・。

 いや、次男ということで親御さんも将来のことは本人任せとか仰っているそうです。

 自由なんだ。それでのびのびと演劇も出来た訳だ。

 劇団の評価はプロ並みで、西日本各地で公演しているらしいです。

 湖笛がですか。

 そうです。

 今まで家の古い酒蔵を稽古場として使っていたらしいですけど、許可していただけたらご縁劇場を本拠地にしたいということです。

 そりゃ、面白いじゃないですか。古賀さんにも相談します。

 それでね、冴子さん。

 なんですか。

 こうなると郁子さんのお母さんのことも知らせる必要が出てきます。この話は坂本さんには・・・。

 ええ、勿論お話ししました。

 どう言っていました。

 いい青年だからご縁劇場の主催者として適任だと・・・。

 それから結婚のことと母親を知らせるのかということは・・・。

 結婚は勿論賛成だそうです。しかし、仙女さんのことは明かしたくないとか・・・。

 仙女さんは独身ということになっていますからね。

 そうなんです。

 いい方法ねえ、・・・まあ、この問題は後でいろいろと相談しましょう。

 あ、それから・・・。

 なんですか。

 照明器具を含めた湖笛の備品はすべてご縁劇場に移したいとか仰っているようです。

 そうなるとあちこちから借り集める必要もなくなる・・・。

 あ、それから、小学校の電気の配線や電気の容量の変更もすべて湖笛関係のお方が工事なさるそうです。

 ご縁劇場にとっては光が見えてきた・・・。しかし、仙女さんのことは大きな問題になる可能性が・・・。

 畝本さん、慎重に進めましょう。

 分かりました。そういいながら私は玉造温泉で仙女さんと約束したことを思い浮かべていました。

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