とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

春の女神の縁談

2013-01-16 23:13:08 | 日記
春の女神の縁談




 「真珠を手にしたアフロディーテ」(Herbert Draper画)

 三美神の中の中心的な存在。この女神は、愛と美と性を司るギリシア神話の女神で、オリュンポス十二神の一柱である。美において誇り高く、パリスによる三美神の審判で、最高の美神として選ばれている。また、戦の女神としての側面も持つ。元来は、古代オリエントや小アジアの豊穣の植物神・植物を司る精霊・地母神であったと考えられる。アプロディーテーは、生殖と豊穣、すなわち春の女神でもあった。(Wiki)




 京都の「出雲の阿国像」

 慶長8年(1603年)春に北野天満宮に舞台をかけて興行を行った。男装して茶屋遊びに通う伊達男を演じるもので、京都で大変な人気を集めた。阿国は四条河原などで勧進興行を行った。

 
 郁子さんの縁談については私は寂しいような嬉しいような複雑な気持ちになっていました。取りあえず長柄さんに連絡しアドバイスをして貰いました。彼は私と玉造温泉で仙女さんに会っているし、舞台姿の絵を仙女さんに所望した経緯もあるので、すぐ事態の複雑さを理解してくれると思ったからです。彼は二人で判断できる問題ではないので、父親の坂本学芸員に相談して、それから当の郁子さんの気持ちは那辺にあるか確かめねばいけないということを述べました。
 それでは、という訳で岡田さんのお宅の納屋の二階に行きました。一時間くらい話しました。結果、郁子さんは随分積極的な気持ちでいることを確認しましたが、坂本さんはやはり仙女さんの娘だということを公にするのには抵抗があるということを繰り返し述べました。私たちはもうこれ以上立ち入ることはできないと思い、止む無くその日は引き上げました。・・・それからずっと二人は何かいい方法はないかと思案していました。数日してから古賀所長から電話がありました。冴子さんが相談を持ちかけたようでした。


 畝本さん、事態が大きく動き出しました。

 えっ、そうですか、で・・・。

 喜多川さんという方ご存知でしょう。

 フェニックス喜多川さんですね。仙女さんの舞台の演出をなさっている。

 そうです。その喜多川さんが仙女さん、郁子さんを連れて向こうの鈴木さん宅へ行ったそうです。鈴木さんとは以前から面識があったらしいです。で、ご本人、ご両親と踏み込んだ話をされて・・・。

 ほほう、喜多川さんが仲を取り持つとは予想していませんでした。

 そうです、そうです。私も正直驚きました。・・・ということで、驚くような結論が出てきました。

 驚くような・・・。

 そうです。すごい結論です。

 どういう・・・。

 隠さず、むしろ積極的に前に押し出すという方法です。

 押し出す・・・。

 そうです。郁子さんが二代目中村仙女目指して修業するという結論です。記者会見でそれを公表し、実の娘だということを宣言するそうです。勿論結婚のことも公表するということです。

 ほほう、これはすごい結論ですね。記者は飛びつきますね。いろいろ書かれることになりますね。

 喜多川流の解決策です。

 では、郁子さんは仙女さんの弟子ということになりますね。すると、鈴木さんの劇団を離れることに・・・。

 いや、初めは湖笛でじっくり演技の基礎を学んで、それから仙女さんの舞台の一員となるという段取りだそうです。

 そうするといずれ夫婦は離れ離れに暮らすということに・・・。

 いや、その点も考えてあるようです。具体的に言いますと、二つの劇団が提携して公演をするということになるとか聞きました。つまり、仙女さんの劇団の言わば前座を務めるということですか。・・・いや、これは私の想像です。

 ということはご縁劇場が重要な役割を演じることになりますね。

 ということです。・・・私は壮大な計画を聞きながら眩暈がするような気分になりました。・・・この話の直後また大きな出来事が起こったのです。佐山医師から電話で新たな企画の内容を聞きました。あの観音像を解体して、今度は阿国の銅像を作ることになったという内容でした。著名な彫刻家が名乗りをあげたそうです。

 阿国なら地元の歴史に馴染みますね。私がそう言うと佐山医師は出雲の地に永久のシンボルが出来ます、と言って上機嫌でした。

 
 

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