吹き抜けになっている3階のテラス席で、
ひたすら落ち着かない気持ちで待っていました。
長い渡り廊下の一番奥に制服姿の女子生徒がヒョコッと現れると、
そのままこちらに向かって走って来ました。
その姿を見て、言葉を待たずともすぐにわかりました。
あぁ、上手く弾けたんだな。
息を切らして私の前に立った下の娘。
その顔は、笑顔ではありませんでした。
初めて見るような顔。
なんだろう。
茫然としているような、びっくりしているような。
信じられないことが起きた・・・って感じの顔かな。
そして、なかなか言葉を発しない。
じっと娘の顔を見つめて、黙って待ちました。
その見開いた大きな目から、涙がこぼれました。
こういう種類の涙も初めて見る。
私の目からも同様に涙がこぼれました。
「弾けた! 間違えなかった! やりきった! すごい満足感がある!」
涙をぬぐうと、興奮した様子で一気に話し始めました。
そんな感情を剥き出しにしたしゃべり方、表情も初めて見る。
娘のその言葉は、まさに私が何よりも聞きたかったもの。
1回目の実技試験を終えた後のあの心折れた状態から、
よくぞ立ち直り、逃げずに果敢に立ち向かったね。
「やりきった!」と誇らしげに言えるくらいの演奏ができたんだね。
本当に強くなったね。
自分の演奏を振り返り、
「悔いがない。」と言い切りました。
不合格になったとしても、やり切ることができたから悔いがないと。
良かった。
それこそが大切。
今の自分の精一杯を出しきれたこと。
心の底から満足感を得られたこと。
努力が報われた瞬間を味わうことができたこと。
あぁ、本当に良かった。
激しい緊張から解き放たれた娘は、しばらく放心状態でした。
いつぞやの、ママ友3人でお茶。
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