「太郎さん、もう冷たくなって来たから戻ろう。」
「もう少ししたら戻りますから、先に帰っていてください。」
我儘を言うなら、もっと甘えてくれれば良いのに、昔から太郎さんの要求は婉曲すぎて、注意深くしていなければ我儘を言っていることに気付けない。
「じゃあ、せめて手を繋ごう。私の手は温かいよ。」
そう言って、少しだけ強引に太郎さんの手を取ると、はにかんだような笑顔で
「はい。」
と返事をする。
最近の太郎さんは、いつも穏やかで声を荒げたりしないかわりに、笑うことも少なくなった気がしていたので、その笑顔が嬉しかった。
そうやって暫く二人で歩いた後、もう一度
「もう帰ろう。」
と言う言葉に素直に従った太郎さんが、少し悲しかった。
「もう少ししたら戻りますから、先に帰っていてください。」
我儘を言うなら、もっと甘えてくれれば良いのに、昔から太郎さんの要求は婉曲すぎて、注意深くしていなければ我儘を言っていることに気付けない。
「じゃあ、せめて手を繋ごう。私の手は温かいよ。」
そう言って、少しだけ強引に太郎さんの手を取ると、はにかんだような笑顔で
「はい。」
と返事をする。
最近の太郎さんは、いつも穏やかで声を荒げたりしないかわりに、笑うことも少なくなった気がしていたので、その笑顔が嬉しかった。
そうやって暫く二人で歩いた後、もう一度
「もう帰ろう。」
と言う言葉に素直に従った太郎さんが、少し悲しかった。