獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その41

2024-12-02 01:13:27 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんがこの本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

設立式が始まる2時間前。
会場の控室で、村木は長崎新聞記者のインタビューに応じた。
かつて「女性キャリアの星」と呼ばれた村木は事件の後、職場復帰し、内閣府政策統括官(局長級)として少子化や自殺対策、障害者施策などを担当。多忙な毎日を送っていた。
以下は記者とのやり取りである。

――弁護士費用を除く賠償金3333万円で「愛の基金」ができた。寄付に至ったいきさつを教えてほしい。

「刑事裁判で無罪になった後、『なぜ私が逮捕されなければならなかったのか』と割り切れない思いが残った。真相を知るために、国などを相手に民事裁判を起こしたが、国はあっけなく賠償金を全額支払うことを認めた。勝訴したのに、がっかりするといういわく言い難い思いだった。裁判の目的は遂げなかったのに、手元に賠償金だけ入ってきた。それで、このお金は公的なことに使ってもらいたいと思い、知人である田島理事長に相談して、基金の形で運用してもらうことにしたのです」

――拘置所生活は5カ月間に及んだ。容疑者・被告として取り調べを受けた経験を通し、累犯障害者の問題についてあらためて思うことは。

「取り調べという特殊な環境で、自分の考えや体験をきちんと主張し、その通りに調書にしてもらうのはすごく難しいと感じた。何十年も社会で仕事をしてきて、役人として文章を読むのも、書くのも慣れている私でさえそうだったのだから、ハンディのある人はなおさらでしょうね……。累犯障害者をめぐる捜査や更生の状況を見ると、彼らが罪を繰り返さずに社会で生きていける仕組みになっていない。何度も刑務所に送るやり方では、本当の意味での更生は果たせない。ハンディに合った更生プログラムが必要なのだと思います。知的障害者の人数は人口比で言えば数%。そういう意味では、累犯障害者の問題は世間では『小さな隙間の話』と思われがちです。しかし一方で、刑務所の受刑者の4分の1は知的障害があるというデータもある。こと刑事司法の分野で、障害者の問題が占めるウエートは小さくない。社会の関心を高めなければいけないと思います」

――村木さんの事件をきっかけに、最高検による検察改革が進んでいる。検察は変わることができると思うか。

「私の取り調べを担当した中堅、若手の検事はその『質』は別にしても、あくまで組織の駒でしかない。あんな事件が起きた原因はやはり(証拠改ざんなどを引き起こす)検事を育ててしまった組織にあるのだと思います。検察組織は特別な権力があって、かつ閉ざされた世界。だからこそ、そうした組織を変えるには大きなエネルギーとうねりが必要でしょう。今そのチャンスが来ている。変わってもらわなければ困りますね」

――村木さんの事件は、メディアの事件報道の問題も浮き彫りにした。

「検察のリークを基に、新聞やテレビが報道し、世論がつくられていくんだと当事者になって初めて分かった。怖いと思いました。メディアは熱しやすく冷めやすい。検察改革の問題にしても、メディアの関心がどこまで続くかが成否を分ける鍵だと思います。興味があるうちは取り上げるが、時間がたつと、追い掛けてもらえなくなるのではないかと心配しています」

――これからの取り組みについては。

「累犯障害者の問題は世間で、一番の日の当たらない場所にあると思います。そこの部分の対策をしっかりやることは、きっと社会全体の底上げにつながります。障害のある人たちが尊厳を持って生きていける社会づくりのために『愛の基金』を役立ててもらいたいと心から願っています」

1時間のインタビューを終え、村木は式に向かった。途中、会場に駆け付けた娘を見付けると、ロビーで二言三言、言葉を交わしていた。
村木の優しげな表情は、どこにでもいる母親のそれに変わっていた。
村木は2012年9月、内閣府から古巣の厚労省に戻った。任ぜられたのは、累犯問題を取り扱う社会・援護局長だった。

(つづく)


解説

村木厚子さんの言葉に感銘を受けました。


獅子風蓮


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