友岡さんが次の本を紹介していました。
『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)
出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。
さっそく図書館で借りて読んでみました。
一部、引用します。
□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
□山本譲司さんインタビュー
□おわりに
第2章 変わる
変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
(つづきです)
「障害があるから罪を軽くしろと言っているのではない。障害があることで刑が重くなってはいけない、と私たちは言っているのです」
大阪市阿倍野区阪南町にある雑居ビル2階。
事務所の応接スペースで、弁護士の辻川圭乃(58)が熱っぽく語る。
大阪市役所に5年間勤めた後、司法試験を突破して弁護士に転職した辻川。障害者の刑事弁護を数多く手掛け、累犯障害者支援の分野では名の知れた存在だ。
辻川によると、知的障害者が警察官や検察官の取り調べを受ける際、相手に迎合して、自分に不利になるにもかかわらず、うその供述をする傾向がある。取り調べを担当した警察官や検察官はおろか、弁護士も、裁判所も障害に気付かず、障害者が供述したうそが事実として認定され、不当に重い処罰を受けるケースは珍しくないという。
法務省の2010年の統計では、知的障害の疑いがある知能指数69以下の新規受刑者は6123人。受刑者全体の2割強に上る。障害が疑われる容疑者・被告の国選弁護人に選任される際、弁護士に集まる情報は少なく、限られた接見時間内で障害の有無やどんな弁護方針がふさわしいのかを見極めなければならない。
かといって、福祉に明るい弁護士ばかりではない。むしろ、苦手意識を持っている人の方がずっと多い。「障害者の弁護人の役目を果たすためには、弁護士向けの『手引』がいる」。辻川は前々からそう考えていた。
辻川が加入している日本弁護士連合会(日弁連)の「高齢者・障害者の権利に関する委員会」(川島志保委員長)は、刑事事件の接見時に容疑者・被告に知的障害の疑いがないかどうかを把握する簡易チェックシートを11年に作成した。
シートには、「質問と答えがかみ合わない」「繰り上げ計算ができない」「特別支援学級にいたことがある」―など約20のチェック項目を掲載し、障害に気付いた場合の相談先として、各地の地域生活定着支援センターや福祉の専門機関を紹介。障害がある人の事件では、起訴猶予処分や執行猶予判決を目指すよう促している。
日弁連は、国選弁護の契約を結んでいる全国の弁護士約2万人にこのシートを配布。 全国各地で開かれる研修会の場で説明するなど、啓発活動に乗り出している。
日弁連元副会長で、シート作成に携わった弁護士の荒中は言う。「障害に気付いてもらえず、福祉の網から漏れ、犯罪に手を染める人もいる。接見時の早い段階から関係機関と連携し、社会内での更生につなげたい」
(つづく)
【解説】
事務所の応接スペースで、弁護士の辻川圭乃が熱っぽく語る。
大阪市役所に5年間勤めた後、司法試験を突破して弁護士に転職した辻川。障害者の刑事弁護を数多く手掛け、累犯障害者支援の分野では名の知れた存在だ。
このような良心的弁護士の地道な取り組みもあったのですね。
敬服いたします。
獅子風蓮