獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その30

2024-10-13 01:27:51 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 ■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 □山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって

(つづきです)

全国で唯一、累犯障害者の「入口」支援に取り組んだ「判定委員会」は10、11年度の2年間で、8人の障害者を支援した。
対象者は、主に長崎県内在住の20代から60代までの男性。知的障害や発達障害、精神疾患があった。罪の中身も、窃盗や傷害、強制わいせつ、道交法違反などとさまざま。限られた時間の中で、判定委のメンバーは対象者の障害の程度や、家庭環境や成育歴など罪を犯した背景について熱心に議論を交わした。
「一口に『障害者』といっても幅広い。どこまで支援するのか」
「そもそも当事者が、福祉がどういったものかを理解していない」
「弁護士を通じてアプローチしても、支援を拒否されるケースがある」
議論が深まるほど、問題点や課題が浮かび上がってきた。しかし、それは裏返せば、累犯障害者対策がこれまでいかに手付かずのまま放置されてきたかの証左でもあった。
触法障害者の裁判に、福祉が積極的に関わることは日本ではほとんどなかった。ノウハウやひな型があるわけではない。手探りの活動が続いた。
判定委の動きに呼応するように、やがて、司法にも徐々に変化の兆しが表れ始めた。

2010年10月18日。長崎地裁。無免許運転などを繰り返し、道交法違反などの罪に問われた林山翔(36)=仮名=の裁判が開かれていた。
林山は20代のころから精神疾患を患い、精神科病院に何度も入・通院していた。
2ヵ月前の8月。
林山は長崎市内で、無免許で車を運転し、追突事故を起こした。運転手にけがをさせてそのまま逃げ、警察に逮捕された。
「言動がおかしい。福祉の手助けが必要ではないか」。
接見した弁護士の連絡を受け、判定委が支援に乗り出していた。
この日の裁判で、判定委は「福祉施設での社会内訓練が適当」とする意見書を提出し、証拠採用された。国の研究事業とはいえ、あくまで民間の取り組みに過ぎない「判定委」の意見書を、裁判所が証拠として認めるのは異例のことだった。仮に執行猶予になった場合、南高愛隣会が運営する施設で林山を受け入れる手はずになっていた。裁判では、愛隣会の職員も証人として出廷。林山にとって施設での更生が刑務所に比べてどれほど「有効」かを熱っぽく訴えた。
長崎地裁裁判官の内藤恵美子は「施設関係者らが立ち直りの協力をすると約束している」と述べ、その日のうちに懲役1年2月、執行猶予3年(求刑懲役1年2月)の判決を言い渡した。
弁護人の井野昭は判決について「受け入れ先がないと再犯の恐れがあり、(施設側に)大きな力をいただいた」とコメント。南高愛隣会常務理事の阿部百合子は「意見書が証拠採用されたことがうれしかった。障害のある人が福祉サービスの中で更生を目指す道が開けたと思う。しっかりと訓練することで3年後、彼が更生できたことを示したい」と語った。
判定委が関わった障害者の裁判の中で、林山の裁判は、福祉施設での更生を条件に執行猶予判決が出た初めてのケースとなった。
しかし、裁判後、林山は思いも掛けぬ態度を見せ、関係者を当惑させた。
「障害者と一緒に暮らしたくない」
林山は突然、福祉施設の利用を拒否した。
裁判後、南高愛隣会が立てた更生計画に沿って、林山は長崎市内の精神科病院に入院し、障害者手帳を取得。病院を退院した後、雲仙市瑞穂町にある愛隣会の福祉施設に移る予定だった。判定委が再三説得したが、林山は最後まで首を縦に振らなかった。
判定委のメンバーの1人、NPO法人長崎県地域生活定着支援センター所長の酒井龍彦は苦渋をにじませた。
「『これは司法との約束事だから』と説得しても、まったく耳を貸さなかった……。 福祉につなぐために法的な拘束力が必要かもしれない。支援対象者の範囲についても十分に見極める必要があると痛感した」
関係者にとって、林山のケースは小さくない課題を残した。

(つづく)


解説

しかし、裁判後、林山は思いも掛けぬ態度を見せ、関係者を当惑させた。
「障害者と一緒に暮らしたくない」
林山は突然、福祉施設の利用を拒否した。

南高愛隣会が運営する施設で林山を受け入れる手はずになっていたので執行猶予がついた。それなのに、出所後、林山は施設で暮らすことを拒否したのです。

なかなか難しいですね。


獅子風蓮



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