ガーシーには嫌悪感が先に立つほどだった私ですが、ガーシーのおかげで救われたという人もいたのですね。
また彼は家族思いで、母や妹には今でも慕われているようです。
ガーシーについて、好奇心がわきました。
ガーシーはどのように育ったのでしょうか。
彼なりの正義とはいったいどういうものなのでしょうか。
そこで、ガーシーの自伝的な本があるというので読んでみました。
ガーシー(東谷義和)『死なばもろとも』(幻冬舎、2022.07)
かいつまんで読んでみたいと思います。
(目次)
□序章 ジョーカー誕生
■第1章 逃亡者
□第2章 しゃべりだけで成り上がる
□第3章 芸能界への扉
□第4章 アテンダーという裏稼業
□第5章 酒と女とカネと反社
□第6章 死なばもろとも
□第7章 社会の不満が生んだ怪物
第1章 逃亡者
□ポケットの中で握り締めた110円のジャリ銭
■ギャンブル依存症がハマる「カネの底なし沼」
■やめたくてもやめられない 俺を破滅させた博打
□一晩1000万円が動く裏カジノが主戦場
□YouTuberのヒカルのギャラ
□ギャンブルで自殺した俺のオヤジ
□雪山で大酒を飲んで死ぬつもりだった
□下4ケタ「1234」
□PCR検査へ急げ
□1泊500円のゲストハウスを泊まり歩く
□日当3000円の日雇い労働で糊口をしのぐ
□暴露系 YouTuber ガーシーの誕生
ギャンブル依存症がハマる「カネの底なし沼」
俺が暴露系YouTuber に転身した理由は単純。博打や。ギャンブルのせいや。
ギャンブルと言ってもいろいろある。競馬、競輪、競艇、宝くじみたいな公営ギャンブルには興味がない。チマチマとしたカネしか動かんパチンコなんかじゃ、全然燃えへん。
裏の鉄火場、違法カジノで麻雀とバカラをやっているときしか、俺の脳髄は興奮せえへんかった。完全にギャンブル依存症や。頭の中では、寝ても覚めてもバカラのトランプが渦巻いてる。夢の中にまで麻雀牌が出てきて、寝てても麻雀やバカラが終わらんのや。
薬物にハマる人も、浴びるほど酒を飲んで酔っぱらわないと眠れん人も、セックスを1日3回キメないと性欲が満たされへん人も、共通する特徴がある。ジャンキー(中毒者、常習者、常用者)の欲望は、いつまで経っても満たされへん。
ギャンブラーにとって大切なんは、勝負に勝ってカネを得ることじゃないねん。目の前の勝負に勝ったら、その次も、そのまた次も勝ち続けたい。持ち金が全部スッテンテンになったらなったで、そこから起死回生の逆転をしてのし上がりたい。
勝ち負けを延々と繰り返しながら、とにもかくにもギャンブルを永遠に続けたい。 ギャンブルをやっていないときも、頭の中であのヒリつきと興奮が片時も忘れられん。ギャンブルなしには生きれん体になってもうたんや。
「お前ら、俺が話通すからBTSに直接会わせたるで」
そう約束して女の子からカネを集めたのは、最初から詐欺をやろうと思ったからやない。27年もアテンダーとして活動してきた俺には、芸能界の表も裏も、クリーンなところもダークなところも、真っ黒けなところも含めて人脈がある。あらゆるルートを駆使してツテをたどれば、彼女らを本当にBTSに会わせる自信はあった。けど、こんな簡単にカネが入ってくるのかと喜んですぐにギャンブルに使ってしまった。
もちろんそのカネに手をつけたらアカンことは、理性ではわかっちゃいる。わかっちゃいるねん。悲しいかな、ジャンキーの脳みそは理性や知性ではコントロール不可能なんや。
「このカネにだけは手ぇつけたらアカンで。人のカネやんか」とわかっとるのに、預り金をバカラに突っこんでしまうんや。
「大丈夫。勝てば取り返せるやろ」
やったらアカンとわかってるのにどんどんどんどん札束をバカラに突っこんでしもうたんや。
やめたくてもやめられない
俺を破滅させた博打
ギャンブル依存症にとっては、10万円の種銭で勝負するのも100万円の種銭で勝負するのも本質的には変わらへん。極端な話、一張り1000万円のバカラであろうが一張りは一張りなんや。
100万円の種銭を手に、違法カジノに毎日せっせと通ったとするやん。負けが込むにしたがって、使えるカネはどんどん目減りしていく。タンス預金やヘソクリかき集め、腕時計や何やら、カネ目のものは何でも質屋にもちこんでカネを作る。種銭が10万円になっても、5万円まで目減りしても「なんとかなるやろう」思ってカジノに通ってまう。
うんとわかりやすく言うと、バカラとは要するに丁半博打や。出目が丁と出るか半と出るか。こっちの読みどおりになれば、手元の5万円は10万円、10万円が20万円……と倍々ゲームでカネは増えていく。「20万円が40万円、40万円が80万円になれば、次はいくらや。5回連続で勝ったら100万超えやないか」。そんなふうに単純計算してまうんや。
「なんつうアホなことをやっとるんや。1000万円なり500万円なり勝ったところで、そこをゴールと決めてスパッと勝ち逃げすりゃええやないか」
博打に関心がないヤツはそう思うやろ。でもギャンブル依存症は、勝ってもやめられへんのや。ある程度勝ったところでやめるようなら、そもそもギャンブルにハマってへんねん。
「まだまだ」「もっとや」と延々とやり続けるうちに、カネを全部溶かしてまう。手元にある札束を熔かすまでやりきらんことには、やめられへんのや。
けど今回の失敗は、さすがにめっちゃこたえた。これはただの負けちゃう。「BTSに会わせる」と約束して人から預かったカネを全部熔かして、ホンマにすべて失ってしもた。アテンダーとして一番大切なのは信用や。その信用をすべて失う大チョンボや。俺にカネを預けてくれた皆さんには、心から申し訳ないと反省してる。
もう絶対にギャンブルはやらへん。俺はそう決意した。せやから、この本を書いてる今はカジノがないドバイにおる。日本には建前上カジノがないことになっとるが、公営ギャンブルもあれば、違法カジノだっていっぱいある。日本におる限り、どうしたってギャンブルから逃れられへんのや。
ギャンブル依存症を治す施設に入所して、それがホンマに効くのであれば喜んで入所する。自分の意志では博打をやめられへん。俺は苦しくてたまらんかったんや。
【解説】
ガーシーは立派なギャンブル依存症(ジャンキー)だったのですね。
典型的なギャンブル依存症の病態を、みずから描き出していますね。
依存症は病気です。
適切な医療を受けて治療したうえで、社会復帰するべきでしょう。
獅子風蓮