ガーシーには嫌悪感が先に立つほどだった私ですが、ガーシーのおかげで救われたという人もいたのですね。
また彼は家族思いで、母や妹には今でも慕われているようです。
ガーシーについて、好奇心がわきました。
ガーシーはどのように育ったのでしょうか。
彼なりの正義とはいったいどういうものなのでしょうか。
そこで、ガーシーの自伝的な本があるというので読んでみました。
ガーシー(東谷義和)『死なばもろとも』(幻冬舎、2022.07)
かいつまんで読んでみたいと思います。
(目次)
□序章 ジョーカー誕生
■第1章 逃亡者
□第2章 しゃべりだけで成り上がる
□第3章 芸能界への扉
□第4章 アテンダーという裏稼業
□第5章 酒と女とカネと反社
□第6章 死なばもろとも
□第7章 社会の不満が生んだ怪物
第1章 逃亡者
□ポケットの中で握り締めた110円のジャリ銭
□ギャンブル依存症がハマる「カネの底なし沼」
□やめたくてもやめられない 俺を破滅させた博打
□一晩1000万円が動く裏カジノが主戦場
□YouTuberのヒカルのギャラ
□ギャンブルで自殺した俺のオヤジ
□雪山で大酒を飲んで死ぬつもりだった
■下4ケタ「1234」 西淀川警察署からの不在着信
■PCR検査へ急げ 秒速で国外脱出
□1泊500円のゲストハウスを泊まり歩く
□日当3000円の日雇い労働で糊口をしのぐ
□暴露系 YouTuber ガーシーの誕生
下4ケタ「1234」
西淀川警察署からの不在着信
ヒカルのアンポンタンが YouTubeで俺の実名をさらしたのは、2021年12月のことや。それまで27年にわたって、「東谷義和」という本名はマスメディアにもネッ トにもまったく出てこんかった。
読者のみんなは知らんやろ。芸能界でキナ臭い事件が起きるたび、俺の存在は週刊誌やスポーツ紙でチラホラ見え隠れしていた。ただし「アパレル会社社長」とか「X」とか、毎度匿名や。一応、一般人やからな。
ヒカルが俺の実名をバラしたせいで、ネット民はすぐさま犯人探しを始めた。俺のプライバシーをさらすのならまだしも、オカンが暮らしている実家の住所まで暴かれた。ヒカルが引き金を引いてネット民が俺の家族の身元調査まで始めた。ストーカーまがいの人間が実家にピンポンまでするようになった。そのせいで、オカンの顔を見に実家へ帰ることすらできなくなってもうた。
iPhone の電源をつけっぱなしにしていると、週刊誌記者なのか誰か知らんが、次々 と知らん番号から着信が入る。煩わしいので、誰とも連絡取らんとこうと思ってiPhone の電源も切った。ヒカルのせいで世間から攻撃されて孤立した俺は、これか らどうしていいかもわからず、三途の川の縁をさまよっていた。
逃走中のあのころは、俺が生きてきた50年の人生の中で一番ヤバかった。借金や弁 済金を返すアテもなければ、収入源も途絶えたままや。
このまま行ったら、精神的に追い詰められて強盗でもしてしまうんちゃうか。そんなことをして人に迷惑をかけるくらいなら、死んだほうがマシや。ネガティブな思考にとらわれて、毎日悶々と過ごしていた。
iPhone の電源を切っていると、次に電源を入れたときに不在着信の通知が出る。知らん番号からまた着信履歴があった。番号の下4ケタは「1234」や。「警察ちゃうか」とピンと来た。裏稼業に関わったことがある人間なら皆知っとるが、警察署の電話番号は下4ケタが「0110」か「1234」と決まっている。
この番号は、いったいどこの警察や。ネットで調べたら、西淀川警察署からの着信やないか。ヒカルは「ガーシーが自分の名を騙って詐欺をやった」と西淀川警察署に被害届を出した。その被害届が受理されたとすると、逮捕されるかもしれん。焦った俺はすぐさま知り合いの弁護士に相談した。
「西淀川警察署から着信があったんですわ。万が一逮捕されたらどうなりますか」 「借りたカネを全額弁済すれば、仮に起訴されたとしても無罪の可能性は高いです。借金を返し終わってしまえば、被害者がいないことになりますからね」
「万が一起訴されて有罪になって、執行猶予がつかなかったらどうなりますか」
「東谷さんの案件だと、最悪5年刑務所に入ることになります」
俺は今50歳や。ここから刑事裁判を受けて、5年も刑務所にブチこまれたら人生終 わる。詐欺で逮捕され、アテンダーとして信用も失った俺が、55歳がシャバに出ていったい何ができんねん。ともかく今警察に逮捕されるわけにはいかん。カネを借りた状態になっている全員と話をつけて、なんとか示談にもちこまなアカン。
今やったらまだ逮捕状も出とらん。だったら国際線に乗りこもうとしたところで、イミグレ(出入国管理)で止められることはないはずや。逮捕したくてもできんように、ガラ(身柄)をかわそう。逃げるんや。それもうんと遠いところへ。
PCR検査へ急げ
秒速で国外脱出
2022年5月、6月と時間が経つにしたがって、世界各国は外国人観光客の移動制限にどんどん規制緩和をかけていった。2021年12月の時点ではまだパンデミッ クの余波は収まらず、国境をまたいだ移動は自由やなかった。
国によっては、ビジネス用の渡航を証明するために駐日大使館でビザを取得せなアカン。日本政府が緊急事態宣言を出している最中なんて、どこの国も警戒して、ビザを申請してから2週間どころか1カ月も延々と待たされたそうや。
西淀川警察署からの不在着信に気づいたのは、午後2時頃やった。「あっ、ヤバッ」とピンと来た俺は、犯罪人引渡条約がなく、ビザナシでいきなり渡航できる国を探した。ただしその国に入るためには、渡航直前に日本国内で取得したPCR検査の陰性証明書が必要やった。
最速で結果が出るPCR検査はどこで受けられるんや。ググってすぐにクリニックへすっ飛んでいって検査を受け、その日のうちに陰性証明書を取得した。その足で国際線に飛び乗ることにした。
その当時、俺は身柄を隠すためにあちこちを転々としてた。詳しくは言えんが、都会には逃亡者が身を隠す場所なんてたくさんある。1泊500円で泊まれるドヤ(簡易宿泊所)に転がりこめばええんや。まともなホテルになんて泊まろうもんなら、フロントまわりに監視カメラが張りめぐらされていてガンクビ(顔写真)を記録されてまうし、フロントで住所や名前も書かなアカン。
その日暮らしのようなギリギリの生活を送る中で警察からの着信。PCR検査を速攻で受け、その日の夕方には国外に逃亡した。
一息ついて油断なんてしようもんなら、いつ逮捕状が出るかわからん。極端な話、全国指名手配なんて喰らったら、絶対に国際線なんて乗られへん。
飛行機に乗って海外に抜けちまえば、あとはこっちのもんや。日本国外に出てしまえば、警察が国境をまたいで追いかけてきて、外国で俺にワッパ(手錠)をかけることなんて簡単にはできん。犯罪人引渡条約がなければこっちのもんや。
旅行カバンなんてない。荷物は手さげバッグひとつにパソコンが入っているだけやった。着替えなんてない。文字どおり身ひとつで、俺は生まれ育った日本からスパーンと脱出した。
【解説】
その日暮らしのようなギリギリの生活を送る中で警察からの着信。PCR検査を速攻で受け、その日の夕方には国外に逃亡した。
一息ついて油断なんてしようもんなら、いつ逮捕状が出るかわからん。極端な話、全国指名手配なんて喰らったら、絶対に国際線なんて乗られへん。
飛行機に乗って海外に抜けちまえば、あとはこっちのもんや。日本国外に出てしまえば、警察が国境をまたいで追いかけてきて、外国で俺にワッパ(手錠)をかけることなんて簡単にはできん。犯罪人引渡条約がなければこっちのもんや。
国内で犯した罪を償うこともせず、無責任に海外に逃亡するガーシーですが、なにやら自慢げに話していますね。
獅子風蓮