気化拒み拘束 密林へも脱出不可 古田嘉彦 「吟遊」75号より*表題句も
草原が〈耳から流出する〉と聴いて、視覚より聴覚の優位によって何ものかが顕現することと読める。実際は、どこまでも不可知の領域に属する。作者の、この一瞬の言語表出の体験は『片足立ち』によってもたらされた。この時、草原はもはやこの涯の時空さえ一瞬ごとのメタファーとする儚きものと化す。作者は、いまも『片足立ち』のままどこへも向かわず、地球の中心から辺境へ向けて直立しているのだと思った。
中心から辺境へ 黒い夏野を仁王立ち まほろば