北海道は冬の嵐が吹き荒れていて、実家がある室蘭の今日の気温は最低-3℃/最高+3℃。
海沿いの強い風が吹く街なので体感気温は-10℃とちぎれる痛さの寒さに見舞われているようで心配です。
この季節になるとたまに思い出すことがあります。
小学校低学年の頃、学校の指定する通学路を無視して、近道のために小さな牧場がある山道を往復していました。
或る日の放課後、その山道で背中に気配を感じて振り返ると、白い子ヤギがいるのです。
眼が合うと「メェ~」と人懐っこく話しかけてきます。なんかの拍子に牧場から抜け出したのでしょう。私が歩くと一定の距離をおいて付いてきます。
私が立ち止り振り向くと、子ヤギもまた立ち止り「メェ~」と鳴きます。それを繰り返すこと数回。
「君、おうち帰らなきゃだめだよ。」「メェ~」「連れて帰れないよ。」「メェ~」「付いてきちゃだめだよ。」「メェ~」「うちじゃ飼えないよ。」「メェ~」「しょうがないなあ。じゃあウチに来るかい?」「メェ~」と話は決まり、子ヤギを家に連れて帰ることになりました。
とはいえ、子ヤギは牧場のもの、犬猫を飼うことも認めない母が子ヤギの飼い主となることを許すわけがありません。でも、とりあえず家まで連れてきたわけですから、子ヤギを何処かに隠さなければなりません。
何処に隠そうか・・・、そうだ!「石炭小屋」に隠そう!
「石炭小屋」は石炭ストーブが主流の昭和40年前半の北海道で燃料の「石炭」を備蓄するための大きめの物置といったようなもので、子ヤギを隠すくらい問題のない広さです。
母に見つからないうちに子ヤギを石炭小屋に押し込め、3つ下の弟にはそのことを話しました。「兄ちゃん、ヤギって何食べるの?」「紙に決まってるよ。」「ふ~ん、紙って画用紙とかでもいいの?」「ティッシュとか柔らかいのがいいんだ!」「ふ~ん」「お母さんに言っちゃだめだぞ!言ったらお前とはもう遊んでやらないからな!」「うん!分かった!」と弟を丸め込み、一日目は2人でたくさんの紙を石炭小屋に運び入れたのです。
翌日、子ヤギが待っているとなると嬉しくて、学校が終わると給食のパンを持って石炭小屋に行くとそこには、鬼の形相の母と秘密をちくった無邪気な弟、そして、石炭の粉で真っ黒になった本当は真っ白な子ヤギが並んで待っていました。
子ヤギは幾分ホッとした眼で「メェ~」と懐っこく摺り寄ってきます。
「早く返してきなさ~い!」と爆弾低気圧のような母の怒声にビビッて、真っ黒になった子ヤギの首に紐をつけ、夕方の真っ白の雪道を私と子ヤギはトボトボとディズニーアニメの「スモールワン」のようにふたりで歩いたのでした。
海沿いの強い風が吹く街なので体感気温は-10℃とちぎれる痛さの寒さに見舞われているようで心配です。
この季節になるとたまに思い出すことがあります。
小学校低学年の頃、学校の指定する通学路を無視して、近道のために小さな牧場がある山道を往復していました。
或る日の放課後、その山道で背中に気配を感じて振り返ると、白い子ヤギがいるのです。
眼が合うと「メェ~」と人懐っこく話しかけてきます。なんかの拍子に牧場から抜け出したのでしょう。私が歩くと一定の距離をおいて付いてきます。
私が立ち止り振り向くと、子ヤギもまた立ち止り「メェ~」と鳴きます。それを繰り返すこと数回。
「君、おうち帰らなきゃだめだよ。」「メェ~」「連れて帰れないよ。」「メェ~」「付いてきちゃだめだよ。」「メェ~」「うちじゃ飼えないよ。」「メェ~」「しょうがないなあ。じゃあウチに来るかい?」「メェ~」と話は決まり、子ヤギを家に連れて帰ることになりました。
とはいえ、子ヤギは牧場のもの、犬猫を飼うことも認めない母が子ヤギの飼い主となることを許すわけがありません。でも、とりあえず家まで連れてきたわけですから、子ヤギを何処かに隠さなければなりません。
何処に隠そうか・・・、そうだ!「石炭小屋」に隠そう!
「石炭小屋」は石炭ストーブが主流の昭和40年前半の北海道で燃料の「石炭」を備蓄するための大きめの物置といったようなもので、子ヤギを隠すくらい問題のない広さです。
母に見つからないうちに子ヤギを石炭小屋に押し込め、3つ下の弟にはそのことを話しました。「兄ちゃん、ヤギって何食べるの?」「紙に決まってるよ。」「ふ~ん、紙って画用紙とかでもいいの?」「ティッシュとか柔らかいのがいいんだ!」「ふ~ん」「お母さんに言っちゃだめだぞ!言ったらお前とはもう遊んでやらないからな!」「うん!分かった!」と弟を丸め込み、一日目は2人でたくさんの紙を石炭小屋に運び入れたのです。
翌日、子ヤギが待っているとなると嬉しくて、学校が終わると給食のパンを持って石炭小屋に行くとそこには、鬼の形相の母と秘密をちくった無邪気な弟、そして、石炭の粉で真っ黒になった本当は真っ白な子ヤギが並んで待っていました。
子ヤギは幾分ホッとした眼で「メェ~」と懐っこく摺り寄ってきます。
「早く返してきなさ~い!」と爆弾低気圧のような母の怒声にビビッて、真っ黒になった子ヤギの首に紐をつけ、夕方の真っ白の雪道を私と子ヤギはトボトボとディズニーアニメの「スモールワン」のようにふたりで歩いたのでした。