伊深自治会館を訪ねた後、旧飛騨街道を西に向かい隣町の富加町加治田の旧加治田駐在所に寄りました。
街道沿いに建つ旧加治田駐在所は、1階は巡査詰署と控え室、2階は宿直室・取調室として戦前までは現役の駐在所として使われていました。戦後は床屋に転用されたため、現在1階部分は窓や玄関ドアなどが床屋用に改装され、外壁の一部もタイル貼りになっています。
外観は漆喰塗りの土蔵造にむくり屋根の和風の仕様ですが、2階にテラスを設け、窓は縦長のダブルハング(上げ下げ窓)とアーチ窓、外壁の角には隅石など洋風志向も取り入れた擬洋風建築と呼ばれる建築様式です。創建当初のままの面影を残す明治期の洋風建築は貴重な存在で、県下現存最古の擬洋風建築と言われています。
かつては明治の初めに洋風の駐在所が建つくらい栄えた加治田の町ですが、今は静かな山里にゆったりとした時間が流れています。隣町の伊深自治会館とともに、この小さな古い駐在所が、いつまでもこの場所で時を刻んでくれることを祈るばかりです。
■旧加治田駐在所/岐阜県加茂郡富加町加治田291-1
竣工:明治10年(1877)頃
構造:木造2階土蔵造
撮影:20010/3/22
建物の老朽化は進み壁は漆喰が剥げ落ちてぼろぼろです
来る度に「建っててよかった」と思わせるくらいの荒れ放題の状態です
むくり屋根のてっぺんにはかわいいウサギさんの鬼瓦がのっています
今回もウサギさんの無事を確認、来る度に両手を広げにっこり笑って出迎えてくれます
火の見櫓と古い洋風建築~過ぎ去りし街角の風景