岐阜市建築散歩~その3
岐阜県総合庁舎の南、今小町交差点に何の変哲も無いフツーのビルがあります。全国どこでも目にする地方の銀行の支店らしい無味乾燥な四角い箱型の建物ですが、この建物が大正13年に建てられた事実にはちょっと驚きます。
大正末から昭和にかけて、機能を重視した直線と平面で構成された新しいスタイルの「モダニズム建築」が都市部から全国に広がっていきますが、この建物は地方都市での比較的早い建設の例と言えるかもしれません。ちょうど同じ頃に建てられた岐阜県総合庁舎や岐阜県教育会館と比較すると、そのシンプルで機能的なデザインが良く分かると思います。
設計はアールヌーボーを最初に日本に紹介し近代建築史にその名を残す武田五一です。武田は名古屋高等工業(現名工大)の教授を務め、東海地方には縁が深く、岐阜市内にも名和昆虫記念館・博物館や旧加納町役場が現存しています。
◆岐阜信用金庫美江寺支店(旧岐阜商工会議所美江寺支店)/岐阜市今小町20
竣工:大正13年(1924)
設計:武田五一
施工:大林組
構造:RC造3階
撮影:2010/09/26
※取り壊し確認(2014/09/07)
■細部の装飾などは一切無く、歴史様式の持つノスタルジーやレトロ感は皆無
建築ウォッチング的には見所は少ないのでちょっと面白味にかけるかも
■縦長の連続窓が唯一時代を感じさせます
鉄とガラスとコンクリートで作られた直線的でシンプルなデザインは、平成の現代の街角にも違和感なく溶け込んでいます
■現在の岐阜信用金庫美江寺支店
残念ながら旧建物は取り壊され、2013年11月に新築オープンしました。
岐阜に現存する武田設計の建物が無くなっていくのは寂しい限りです。
このところ岐阜教育会館も取り壊され、岐阜の近代建築の行く末が心配です...
撮影:2014/09/07