大垣は10年以上前に一度訪れていますが、今回は現存確認と画像の更新もかねて、JR大垣駅周辺の徒歩圏内の近代建築を訪ねました。
まずは大垣駅の北西、県道18号線(赤坂街道)沿いにある旧鐘紡大垣工場に向かいました。大垣駅から線路沿いに西へ向かい、県道18号で東海道本線の下をくぐると左手に白い洋風建築の事務所と赤煉瓦の倉庫らしき建物が見えてきます。元々は大正2~3年頃に後藤毛織の大垣工場として建てられたものですが、昭和11年に鐘淵紡績(後のカネボウ)に合併され、その後売却され現在は三甲(サンコー)テキスタイルの所有となっています。
岐阜県西濃地方は、豊富な地下水と水力発電所による安定した電力、東海道線沿いという好立地条件から、大正期以降多くの繊維工場が進出しましたが、その頃の建物は戦災を受けたり、その後取り壊されてほとんど残っていません。現在残る事務所と倉庫は、大正期の織物工場の様子を今に伝える貴重な近代化遺産で、また後藤毛織関連の建物としては、木曽川別邸と長良別邸(後関の孫六苑「阿房宮」)が取り壊されたため、県内では最後の遺構になってしまいました。
◆三甲テキスタイル(株)事務所・倉庫(旧鐘紡大垣工場・後藤毛織大垣工場)/大垣市室村町3-74
竣工:事務所/大正2年(1913)、倉庫/大正3年(1914)
構造:事務所/RC造2階、倉庫/煉瓦造
撮影:2013/11/23
■街道沿いに建っているのでよく目立ちます
■外壁が白く塗られた事務所棟
軒先の蛇腹や窓廻り、壁面、隅の柱、玄関の装飾などに大正期の洋風建築らしさがうかがえます
■玄関の庇はむくり屋根風で、鉄骨の支えは蔦草をあしらったアール・ヌーボー風
■赤坂街道沿いに南北に建つ煉瓦造の倉庫
当初は南北二棟の倉庫が残されていましたが、現在は南棟のみが現存しています