大正~昭和戦前まで、銀行建築のファサードはオーダー(列柱)を中心としたデザインが隆盛を究めます。古代ギリシャ・ローマを起源とする古典主義建築は20世紀に再ブレイクを果たし、遠く日本でも銀行建築を中心に都市のメインストリートを飾りました。しかし「盛者必衰」とはよく言ったもので、すでにこの時日本でも表現主義に代表されるモダンデザインの流れがひたひたと押し寄せていました。オーダーが並ぶクラッシクな建築の横で、歴史様式の装飾を一切排除した、コンクリートとガラスの四角い箱のモダニズム建築が次の出番を待っているのでした。
■旧岡崎銀行本店/大正6年(愛知県岡崎市)
三河地方で最初の本格的な銀行建築。正面玄関廻りはお約束のクラッシクな円柱を配し、銀行らしい威厳を演出。
■旧名古屋銀行一宮支店/大正13年(愛知県一宮市)
ファサード全面の1階~3階までぶち抜きのドリス式オーダーは大迫力。アーケードで隠れて柱頭飾りなど全容が見られないのは残念。
■旧津島信用金庫本店/昭和4年(愛知県津島市)
アカンサスというよりは、サニーレタスが張り付いた様なコリント風のオーダーが並ぶ玄関。
昭和初期の地方銀行では、オーダーの扱いがかなり簡略化されているパターンが多い。
■旧岐阜貯蓄銀行本店/昭和12年(岐阜県岐阜市)
正面のオーダーは本来の円柱状ではなく、壁と一体化し付け柱状になっている。
■滋賀中央信用金庫銀座支店(旧明治銀行彦根支店)/大正13年(滋賀県彦根市)
オーダーは壁と一体化してかろうじて痕跡をとどめています。
■旧大垣共立銀行美濃加茂支店/昭和27年(岐阜県美濃加茂市)
戦後の竣工ながら、壁と一体化しデザイン化されたオーダーのモチーフを残しています