銀行建築と並んで役所、公会堂、郵便局などの建物もオーダーが好んで用いられました。明治以降に建てられた公共建築は、ほとんどが西洋建築のスタイルに移行したので、必然的に最も西洋建築らしいオーダーを中心とした歴史様式のデザインが主流になりました。建築家や設計事務所が設計したそれなりの建物はもちろん、地方の小さな町の役所や郵便局なども、まあとりあえずはギリシャ・ローマ建築風の柱を並べておけば、手っ取り早く西洋建築としての体裁が整うので、こぞってオーダー風の柱でファサードを飾ったのでした。
■豊橋市公会堂/昭和6年(愛知県豊橋市)
2階入口までの大階段、正面を飾る6本のオーダー、両脇に半球ドーム、まさに建築の様式美
■旧一宮市役所本庁舎/昭和5年(愛知県一宮市)
正面玄関の上の4本のオーダーはかなり簡略化され、平面的なシンプルなデザインになっています
(建物は残念ながら2013年取り壊されました)
■木曽川資料館(旧木曽川町会議事堂)/大正3年(愛知県一宮市)
玄関車寄のトスカナ風のオーダーは、建物の規模からすればかなり頑張った立派なもので、議事堂の威厳と重厚さを演出
■四郷郷土資料館(旧四郷村役場)/大正10年(三重県四日市市)
3本の細い木製の柱をワンセットにして、太いオーダーに見立てています
■米原市醒井宿資料館(旧醒井郵便局局舎)/大正4年(滋賀県米原市)
2階分の高さのあるアーカンサスの柱頭飾り付きの角柱を並べたファサードは、西洋建築らしさを強調しています
地方都市の郵便局としてはかなり立派なもので、当時の醒井宿の繁栄が偲ばれます
■名和昆虫博物館/大正8年(岐阜県岐阜市)
オーダーの上にはしっかり三角ペディメントが載る本格派で、ギリシャ神殿を思わせる風格