この映画のためにビージーズは、オリジナルの楽曲を6曲提供している。どの曲も名場面を彩る素晴らしい曲ばかりだが、やはり『小さな恋のメロディ』といえば日本でも大ヒットした『メロディフェア』に止めを刺す。この曲はメロディの初登場シーンで流れるいわば彼女のテーマソングだが、原曲はビージーズの2枚組アルバム『オデッサ』(1969年)に収録されていたものだ。彼女が金魚を手に父親を酒場に迎えに行くシーンは、今も鮮明に心に焼きついていて、当時ぼくの一番のお気に入りだった。
アパートを出て酒場まで行くメロディの表情を、カメラは遠近取り混ぜ様々なアングルからとらえる。きらめくような少女らしい笑顔から、時にはちょっと憂いを含んだ大人っぽい表情まで、少女と女のはざまで揺れ動く11歳のメロディ。ぼくと一緒に映画に行ったI君を含め、当時この映画を見た多くの中学生は、メロディ登場のこのシーンに完全に魅了されたのだった。
『メロディ・フェア/MELODY FAIR』
泣き顔のあの娘は誰だろう
あれこれ心を悩ませている
あの娘にはわかっている
人生は競走だって
でも顔にはださないで
メロディ・フェア 髪をとかしてごらん
君も美しくなれるんだ
メロディ・フェア
忘れちゃだめだよ 君はひとりの女
メロディ・フェア
忘れないで 君は女の子なんだ
窓辺のあの娘は誰だろう
降る雨を眺めてる
メロディ、人生は雨じゃない
メリー・ゴー・ラウンドのようなものさ
メロディ・フェア 髪をとかしてごらん
君も美しくなれるんだ
メロディ・フェア
忘れちゃだめだよ 君はひとりの女
メロディ・フェア
忘れないで 君は女の子なんだ
■母親の洋服と勝手に交換した金魚を手に酒場に向かうメロディ
小さな子供たちがもらった金魚を恨めしそうに見つめる
■馬用の水桶に金魚を放しちょっと寄り道
■泳ぐ金魚を見つめ彼女は何を思う
■11歳の女の子らしい屈託のない笑顔
■酒場に向かうメロディ
■酒場の窓越しに父を探すメロディ
父のいる壁の向こうはオトナの世界、今はまだ11歳の少女にこの壁は越えられない
■なかなか父が見つからず不安そうな表情
■壁にもたれ父を待つ
■父が酒場から出てきてほっと表情を崩す
父親を迎えに行く短いシーンだが、『メロディ・フェア』の歌詞が字幕で流れ、それが各場面にぴったりはまる。
映像と音楽がひとつになったこの名シーンは、40年経った今もぼくの心に刻まれていて、この映画を忘れがたいものにしてくれた。