この映画の中心はもちろんダニーとメロディのラブストーリーだが、ダニーとトムの男の友情も細やかに描かれている。少年軍で知り合い同じクラスのふたりは親しくなり、いつも一緒に行動するようになる。ある日の下校時、ダニーはトムに誘われ家へ向かうバスとは反対方向のウエスト・エンドへ向かうバスに乗りこむ。
ウェスト・エンド(ダニーたちが住むのはロンドン南部下町のランべス地区)はロンドンの娯楽の中心地で、商業施設や映画館、劇場が軒をならべる。トラファルガー広場やピカデリー・サーカス周辺で無邪気に遊ぶふたり。その姿は男同士のデートを楽しんでいるようで、この少年期ならではの男のつきあいは、男子なら誰でも思い当たるものがあるに違いない。もちろん当時女子とつきあったことがないぼくも、男友達のグループや友人とふたりで映画や繁華街へ遊びに行き、男の友情を満喫したものである。(もちろんみんな女子と遊びに行くのはやぶさかではないのだが、クラスにはそんな甲斐性のある男子はいなかった)
この男ふたりでウエスト・エンドへ繰り出すくだりは、同世代のぼくにはに心惹かれるものがあり、バックに流れるアップテンポの軽快な曲『ギヴ・ユア・ベスト』とともに印象深いシーンだった。トムのテーマとも言えるこの曲は、ヴァイオリンやバンジョーを使ったカントリーテイストのにぎやかな曲で、元気でやんちゃなガキ大将トムのキャラにぴったりハマる。明るい曲調の反面、歌詞は道化師の悲哀を綴っているのだが、このあたりも陽気さの中に孤独な影を引きずる淋しがりやのトムを彷彿とさせる。またこの曲は、ダニーとメロディの海岸リゾートのデートシーンでも使われ効果を上げている。
『ギヴ・ユア・ベスト/Give Your Best』
オイラはしがない道化者
昔は友だちをごまんと持っていた
オイラの出番はみんなの最後
でもオイラは友だちにベストを捧げた
ショーもやってきたよ
みんなが知ってる
着てるものもほとんど売っぱらった
与える者がいれば 貸すやつもいる
だからオイラは友だちにベストを捧げる
たとえ人生に光がないと思えても
毎日いつも真っ暗っていうわけじゃない
夜が開ければ朝が来る
平和があれば 今度は闘うときだ
友だちにベストを捧げて
■帰りのバスを待つ学生たちの列に、トムたちのグループが強引に突っ込み大騒ぎ
■ダニーをウエスト・エンドに誘うトム
■学友たちを尻目に、反対側の停留所からバスに乗り込んだふたり
■トラファルガー広場で大はしゃぎ
■こういうおちゃらけなヤツ、クラスに一人はいました
■中学生のぶんざいでオトナの店をひやかし、お兄さんに追い払われる
■ホームレスのおじいさん、あなた生きてます?
■映画「パットン大戦車軍団」の看板のポーズをとるトム(こんなこと、やったよなあ~)
■トムは複雑な家庭の事情をダニーに打ち明け、ふたりの友情はさらに深まっていく
ウエスト・エンドのシーンは、ガキ大将トムの独壇場。
こんなヤツが友達にいると、毎日の学生生活がホント楽しくなります。
ところで、この映画には2階建ての赤いバスがよく登場する。この時代(1970年代)のロンドンを走っていたのは「ダブルデッカー」という旧式のバスで、通称ルートマスターという愛称で親しまれていた。運転手のほかに車掌がいるのが特徴で、オープンになった最後部から乗り降りする。 2005年、ルートマスターは50年の歴史に幕を下ろし、現在はロンドン市内を観光用バスとして運行している。
■ルートマスターに飛び乗りウエスト・エンドへ向かうダニーとトム
■酒場に向かうメロディのシーンにも登場
■ダニーとメロディは初めて一緒に下校し、バスの間を横断しメロディの家へ向かう
〈参考〉映画でわかるイギリス文化入門/板倉巌一郎他/松柏社/2008