噴水塔のすぐ南側に小さな野外ステージがあります。石張りの壁には何やら難しそうな文言が彫られた青銅版が埋め込まれていて、噴水塔や奏楽堂に通じる歴史的建造物に共通のたたずまいが感じられます。
この建造物は普選壇(御誓文記念壇)と言って、大正14年普通選挙法成立時、時の総理大臣で愛知県出身の加藤高明の功績を記念して昭和3年6月に銅像とともに建設されたものです。野外劇壇(ステージ)後ろの青銅版の難しそうな文言は、普通選挙の基本精神「五箇条の御誓文」で、建設の趣旨とともに漢字とカタカナの文章で刻まれています。
明治政府の基本方針となった「五箇条の御誓文」と言えば、私などは坂本竜馬の「船中八策」がすぐ頭に浮かびます。しかし実際の起案は福井藩の由利公正だそうで、「船中八策」を竜馬が書いたのは由利公正に会った後だったとのことです。どうも高校生の時にハマった司馬遼太郎の「竜馬がゆく」の影響で、明治維新の陰の立役者としての坂本竜馬のイメージが強いようです。私にとって、高校生の時に読んだ司馬さんの「竜馬がゆく」は、今でも忘れられない『青春の一冊』で、「五箇条の御誓文」→「船中八策」→「坂本竜馬」まで思いが飛んでしまいました。
■普選壇全景
■「五箇条の御誓文」が刻まれた青銅版(昭和42年復元)
■普選壇裏側
◆普選壇(御誓文記念壇)/名古屋市昭和区鶴舞1丁目
竣工:昭和3年(1928)
設計:佐藤功一
施工:沢田巳一郎
構造:RC造石張り
撮影015/03/21
※市指定文化財、景観重要建築物等