噴水塔のすぐ北側、鶴舞公園の西北に名古屋市公会堂があります。
公会堂は昭和5年、昭和天皇の御成婚記念事業として建てられたものですが、大正~昭和にかけて大阪中之島公会堂(T7)や東京日比谷公会堂(S4)など、各地に大規模な公会堂が造られました。
3階までの吹き抜けの大ホールは2,700席、規模としては日比谷公会堂に肩を並べ、当時の名古屋市の意気込みがうかがえます。
建物全体を茶褐色のスクラッチタイルで覆い(1階部分は石張り)、玄関入口や最上階の窓にアーチを配した隅丸のデザインは、かたまり感のある彫塑的な当時流行の表現主義風です。
愛知県内では、現存する戦前の公会堂としては豊橋市公会堂(S7)がありますが、外観の印象は対照的です。
明るく軽やかな豊橋市公会堂に対し、名古屋市公会堂は重厚感あふれる落ち着いた雰囲気で、タイプの異なる二つの公会堂が残ったのは、近代建築ファンには嬉しいところです。
蛇足ながら名古屋市公会堂は、クラッシックからロックまで、数々の世界的アーティストの公演の舞台となりました。
ちなみに私も名古屋市公会堂へコンサートに行った思い出があります。「おくさまは18歳」でおなじみの岡崎友紀のコンサートだったのですが(友人が大ファンだった)、それが名古屋市公会堂では最初で最後のコンサートになりました。
■建物南側正面
■玄関廻りの造形は、昭和初期の近代建築特有の重厚感あふれたデザイン
■建築細部には昭和のモダニズムが宿る
■建物北側
■建物東側
■雪の日の公会堂(撮影:2008/02/10)
◆名古屋市公会堂/名古屋市昭和区鶴舞1丁目
竣工:昭和5年(1930)
設計:名古屋市建築課(建築顧問:武田五一、佐野利器、鈴木禎次)
施工:大林組、清水組、大阪鉄工
構造:SRC造地上4階、地下1階
撮影:2015/03/21
※景観重要建築物等