東京駅丸の内南口のすぐ正面に建つJPタワーの低層部に、5階建の東京中央郵便局の旧局舎が部分保存されています。歴史的建造物の保存に最近よく見られる手法で、旧建物を一部保存した低層棟の上に、超高層棟を建て増ししています。
日本工業倶楽部会館(今回未見)もこの手法で、銀行協会ビルは保存した壁面だけの貼り付け、丸ビルは全て建て替えでイメージ保存、と丸の内のオフィスビルは様々な保存方法がとられています。(イメージだけの継承を「保存」というのは疑問も残るところですが…)
旧局舎のデザインは真っ白な装飾のない壁面に四角の窓が規則正しく並ぶ初期のモダニズムで、設計は逓信省の吉田鉄郎。吉田のデザインは当時としてはかなり先鋭的で、B・タウトやA・レーモンドといった海外のモダニズムの巨匠たちからも絶賛されました。
向かいの辰野の東京駅と比べると、そのデザインの違いは一目瞭然、この二つの建物がたった17年という短い期間に建てられたのは驚きです。明治~大正の歴史様式建築、昭和のモダニズム建築、カーテンウォールの高層ビルが同時に見られるのは、まさに「メガロポリス東京」ならではの醍醐味です。
■コンクリートのモダニズム建築から、ガラス・カーテンウォールのツルピカ高層ビルがニョキッと建っている風景はまさに東京ならでは。
■装飾を排し直線で構成された機能的なデザインながら、明るく軽やかな印象。
吉田は同様のモダンデザインで大阪中央郵便局も手がけています。
◆JPタワー(東京中央郵便局)/千代田区丸の内2-7-2
竣工:平成24年(2012)/昭和6年(1931)
設計:三菱地所設計/吉田鉄郎(逓信省経理局営繕課)
施工: /銭高組・大倉土木
構造: /SRC造5階建
撮影:2017/8/11