素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

“ことば”の重み

2011年12月12日 | 日記
 買い物のついでに本屋をブラブラしていると、ベニシアさんの書かれた『ベニシアの 京都 里山暮らし~大原に安住の地を求めて~を見つけた。

 ベニシアさんが折にふれて書かれたエッセイをまとめたもので、ご主人の梶山正さんが美しい日本語に翻訳されている。ちょっと時間が空いた時に読むのにほど良い長さである。本の中にある梶山さんの撮られた写真もなかなか良い。

 エッセイを読んでいると、ベニシアさんの生きてきた道のりが伝わってくる。BSの「猫のしっぽ カエルの手」を見て感じていたより、その歩みは平坦ではなかった。語られている言葉は平易だが、なぜか心に伝わってくるのは、言葉を紡ぎだすベニシアさんの人生の深みが源になっているからだろう。

 貴族の家に生まれ、イギリス中北部のダービシャー州にあるケドルストン・ホールと呼ばれる大きな屋敷に暮らしていた。写真があったが屋敷というよりは城である。領地が約6000エーカーとあるが、1エーカーは4046.9平方メートル・1224.2坪なので途方もなく広い。
 しかし、そこでの生活は幼い子供にとっては寂しいものだったという。6人兄弟の一番上で、生活のすべてはフランス人乳母に任され、母親と一緒の時間は一日の中で、おやすみのあいさつをする数分間だけであったという。両親は離婚していたので父親と会えるのもごく限られた時しかなかった。

 19歳の時、貴族社会に疑問を持ち、数人の仲間と中古のバンを買い、二ヵ月間かけてインドに着いた。そこで瞑想道場での生活を10ヶ月ほどした後に帰国する仲間と別れ日本に向かった。ひと時の旅のつもりが、いつしか日本での生活の中で多くの人と深く関わるようになり、来日3年目に日本人男性と結婚して3人の子供が生まれた。

 しかし、結婚して13年目に、どうにも折り合いのつかない問題から離婚を決め、36歳で3人の子供(12歳と11歳の娘と8歳の息子)を抱えたシングルマザーとなる。

 離婚してからの6年間は、ひとりで父親と母親の役割を果たそうとしたという。日本人男性と再婚するなど夢にも思ってなかったが、1991年に今のご主人である梶山正さんと出会った。梶山さんも離婚していたが、彼の子供を産んで新しい家族を一緒に作りたいと思い、再婚を決める。

 そして、息子の悠仁さんが生まれ、1996年から3人で今の大原の家での生活が始まった。映像は再婚して16年目の今の姿を映す。しかし、発する1つ1つの言葉は61年の人生から出ている。本の中にある響きの重いベニシアさんの言葉。

 Nothing in the world happens by chance.

Believe in your own journey through this life.

For me,life on earth is all about learning to grow as a person.



この世で偶然に起こることはない。

 あなたが進む人生の旅の道を信じて。

 私にとって、この地上での人生は、

 全てひとりの人間として、成長することを学ぶためにある。
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