アリス・マンローさんの『ディア・ライフ』を読み終え、同じくマンローさんの『小説のように』へは進まず、ちょっとはずして池澤夏樹さんの『セーヌの川辺』を読むことにしました。
『セーヌの川辺』は新聞論説委員の方の「景観は公益という概念」というタイトルのコラムの中で紹介されていました。池澤さんは現在札幌にお住まいだそうですが、定住を志向する方ではないようです。札幌の前はフランス、パリ近郊の小さな町に4年間住んでいたそうです。そのような生き方は、私にとってはまばゆいばかりに羨ましいものです。地球という星に人間として生まれたからには、住みたい場所に住みたい。慣れてしまったらまた別の場所に移る・・あれれ、なんだか『神様のボート』みたいなこと言ってますね。あのドラマ、きれいでしたね。。
話が逸れました。日本はおもてなしを誇るけれど、なぜ景観には無頓着なのでしょう。日本に住んでいて不自由なことは全くといって良いほどなくて、本当にありがたいことなんですが、街の景観が好きになれません。派手な看板だの、電線だの・・・。ちょっと遠くへドライブをしていてもひょっこり表れるのは全国展開のスーパーやドラッグストア、衣料品店などが入った巨大なショッピングセンター。なんとなくその土地の個性が感じられなくてがっかりします。でも、そういう感覚って「旅人」だからそう思うんだよって言われたことがあります。住んでいる人にとってはなくてはならないものだからですね。だけど、そういった生活に密着した必要な建物こそ、景観や土地柄に合わせて作ったらもっと素敵なのに。日本全国、果ては世界中に同じお店が増えていくのは経営者にとっては満足この上ないことでしょうね。でも旅人は写真を撮りたいとは思わないでしょう。
肝心の本についてですが、エッセイでして、それぞれのタイトルがおもしろいのです。「聖マルタン、愛知万博、植民地の料理、車を燃やす」。これでひとつのエッセイが綴られています。一つ一つの単語がまるで関係するとは思えないのに、池澤夏樹さんの頭の中では全て繋がってひとつの思考作品になっている。人は誰しもあれこれと頭の中で思いをめぐらせているものですが、それを赤の他人にわかるように書くのは並大抵のことではないように思います。作家にもいろいろなタイプがあって、それぞれにおもしろいですね。
この『セーヌの川辺』は『異国の客』という本の第2弾になります。異国の・・もぜひとも読まなくては!