https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181007-00241449-toyo-soci&p=2略
■「墓じまい」のために散骨を選ぶケースも
さらには、核家族化や少子化など家族構成の変化により、墓の継承が困難なケースが増加。後継ぎを必要としない墓に対するニーズが高まっている。合葬式の共同墓などもその1つだが、散骨であれば故人の墓はそもそも不要ということになる。
「故人の遺志に加えて、最近では『墓じまい』のために散骨を選ぶ方も増えている」と村田氏は言う。墓じまいとは、墓を撤去し、墓石などを処分すること。これまでは、遠方にある実家の先祖代々の墓を片付け、現住所近くの墓地に改葬するといったケースが多かった。だが、墓の継承問題を理由に「墓じまいの後は、もう墓を作らない」ということで、散骨を検討する人も出てきている。
散骨への関心が高まるのに合わせて、新規参入業者も増加。まだ専業はごく少数で、葬儀社などの兼業が多い。遺族が立ち会わない委託散骨をメインに低価格路線を打ち出す業者も登場している。中には「何のセレモニーもなく、無造作に遺骨をバケツで海にまくなど、粗雑なことをする業者もある」(業界関係者)。
日本海洋散骨協会では、海洋散骨が原因で起こるトラブルを未然に防ぐために、「海洋散骨ガイドライン」を策定。粉骨(遺骨を遺骨とわからない程度に粉末化)、散骨場所の選定、自然環境への配慮、参列者の安全確保、散骨意思の確認、散骨証明書の交付などの義務を定めている。2017年からは「海洋散骨アドバイザー」という講習型の検定試験も開始した。略
刑法190条には遺骨遺棄罪があるが、1991年に「葬送の自由をすすめる会」が「自然葬」として散骨を実施し社会的注目を集めた際、「葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題ない」との見解を法務省が示したとの報道がなされた。一方、墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓地埋葬法)は、公衆衛生上の観点から埋葬と焼骨の埋蔵について規制しているのみで、散骨については想定外だ
■熱海市や伊東市には独自のガイドライン
陸上散骨については、関連自治体の協力を得て島全体が散骨場となっている島根県隠岐諸島のカズラ島のようなところもあるが、周辺住民とのトラブルや反対運動が起こったことなどから、条例で規制している自治体も出ている。
海洋散骨については、海は国の管轄ではあるが、熱海市や伊東市のようにガイドラインや指針を設けている自治体もある。熱海市では市内の土地から10キロメートル以上、伊東市では6海里(約11キロメートル)より離れた場所で散骨することとしている。法律の規定がないため、散骨に関する取り扱いは、自治体によってさまざまだ。
墓や葬送の歴史が専門の森謙二・茨城キリスト教大学名誉教授は「祖先崇拝や家による遺体・遺骨の保存・継承という社会の枠組みが崩れ、刑法と墓地埋葬法の間に『法の空白』というべき領域が出現している。あらためて『死者の尊厳を守る』という観点から、墓地埋葬法の改正も含め、新しい秩序を再構築する時期に来ている」と言う。