【1】生乳(せいにゅう)
まず皆さん、「生乳(せいにゅう)」と「牛乳(ぎゅうにゅう)」の違いをきちんと説明できますでしょうか。ご存知の人も少なくないかと思いますが、明確には分からないという人のために、その違いを最初に説明しておきましょう。
食品衛生法に基づく厚生省令「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」によると、生乳とは「搾取したままの牛の乳」のことをさします。
そして牛乳は、「発酵も乾燥もしていない、生乳に加熱・殺菌処理などをしたもの」を指します(ちなみに脱脂粉乳やクリーム、バターなどを加えると、味わいがまろやか「加工乳」になります。そして、ビタミン・ミネラルなどの栄養分、コーヒーや果汁を加えると、コーヒー牛乳などの「乳飲料」になります)。
それでは、その違いを踏まえた上で話を戻しましょう。
私たちが普段生活していて、「生乳」をそのまま口にすることはありません。搾ったままの生乳には細菌が含まれているため、食品衛生法により生乳をそのまま販売することはできないのです(※注意:日本国内においては、国の厳しい安全基準をクリアし、認可され「生乳」を販売する農家もあります)。
ですので、「生乳」はリスクのある飲み物になります。
特に子どもの場合は、「大腸菌」や「リステリア菌(Listeria monocytogenes=リステリア・モノサイトゲネス)」など死の危険性までもはらむ大きなリスクとなります。
後述の「リステリア菌」は、河川水や動物の腸管内など環境中に広く分布する細菌になります。誤解のないように最初に言いますと、日本国内ではこれまでの食中毒統計では、「リステリアによる食中毒の報告例はありません」と厚生労働省は発表しています。ですが、食品安全委員会の評価書によると、「リステリア」感染症の推定患者数は年間200人(※2011年の時点)とされているとも言われています。
「リステリア」は、ほかの一般的な食中毒菌と同様に加熱により死滅しますが、4℃以下の低温や12%食塩濃度下でも増殖できる特徴を持っているとのこと。
一般的に食品を冷蔵庫で保存したり、塩漬けにしていると、食中毒菌が増えないと思いがちですが、このような条件下でも「リステリア」は増殖し、食中毒の原因になる恐れがあるそうです。
「リステリア」症は、発症しても軽症で自然に治るとされています。が、「リステリア」に感染したときの症状の重篤度は、個人差があるそうです。人によっては悪寒、発熱、筋肉痛などインフルエンザなどの他の感染症と区別が難しい場合や、敗血症、髄膜炎(ずいまくえん)、中枢神経系症状などを引き起こす場合も報告されていることは心に留めておきましょう。
「リステリア」に感染して重症化することは稀と言われていますが、妊婦さんや高齢者など、免疫機能が低下している人にとっては細心の注意が必要です。重症化すると致死率が高い疾患であることから、「WHO(世界保健機関)」も注意喚起を行っています。日本国外では、残念ながら死亡例も確認されていますので…。
厚生労働省によれば、2010年にアメリカで「リステリア」食中毒が発生し、「33名の方が亡くなられた」という事例が記せられています。また、患者の多くは60歳以上で、1名の女性患者は「流産した」という報告もあるそうです。
厚生労働省が啓発する「家庭での予防対策」としては、「リステリア」は冷蔵庫内でも“増える”ものとし、「冷蔵庫を過信せず、食品は期限内に(開封後は速やかに)食べるよう心がること」を推奨しています。ただし、「リステリア」は加熱によって死滅する菌なので、加熱して食べることも予防対策の一つになるとしています。
最後に、アメリカの「疾病対策予防センター(CDC)」によれば、「生乳が原因で病気になる可能性は、低温殺菌牛乳の150倍にのぼる」という報告がされています。
腎不全(じんふぜん)や麻痺を引き起こす重篤な疾患もあるとのこと。アメリカの乳製品が関係する感染例に関しては、121件のうち73件(60%)は生乳製品が原因であったと報告されています(※2012年の時点)。そして、3人の死亡例も公表されています。
国内外での酪農体験による乳搾りなどでは、明確な安全基準が確認できない限り、「生乳」を興味本位で飲むことは避けたほうが無難であると言えるでしょう
【2】トウガラシ
最近、YoutubeなどSNSで「超激辛の食品を食べる姿」や「極端な偏食」「極度の量を食する」動画が投稿されで人気を集める傾向にありますが、「激辛好き」「大食い」の人は、ここで改めてさらなる注意が必要かもしれません。
「2018年4月、医学誌『British Medical Journal』が、米国ニューヨークで開かれた”トウガラシの大食い大会”で、世界一辛いといわれる「キャロライナ・リーパー(Carolina Reaper)」というトウガラシを食べた挑戦者の男性が、大会直後に激しい頭痛を訴えて病院に運ばれた症例を発表した」と米『CNN』が伝えています。
トウガラシが原因と思われる「可逆性脳血管攣縮症候群(かぎゃくせいのうけっかんれんしゅくしょうこうぐん=以下、RCVS)」であると診断されたそうです。
この「RCVS」とは激しい頭痛を伴う疾患で、大抵は数日から数週間で回復するそうですが、重症化すると命にかかわることもあると伝えられています。この「RCVS」という症状で病院に運ばれる例は、通常トウガラシが原因ではなく、頭痛薬などの医薬品やコカインなどの違法薬物が関係した場合だということ。この、トウガラシによって「RCVS」が引き起こされた症例は、これが初めてだったそうです。
トウガラシには、「カプサイシン(capsaicin)」という化学物質が含まれています。このカプサイシンには、体の特定部位の血管を狭窄(きょうさく)させる作用があることが分かっており、医薬品にも少量が使われているそうです。
また、2014年には英国人ジャーナリストのルアリ・バラット氏(Ruari Barratt)が、カプサイシンの過剰摂取によって命を落としかえるほどの重症となり病院に運ばれたことを米『NBC』が伝えています。
大量のカプサイシンを摂取した場合、胃の収縮を引き起こすこともあるので、激辛好きの方や大食い大会に出場する人は、十二分に注意しましょう。
【3】マシュマロ
今回は食品自体に問題がある訳ではなく、それを取り扱う方法について注意が必要という事例をご紹介しましょう。
アメリカでは、口の中に限界までマシュマロを詰める「チャビーバニー(Chubby bunny=太ったウサギ)」というパーティーゲームがあります。
これはマシュマロは噛んだり、食べたりしてはいけなく、順番にマシュマロを口に入れる作業を繰り返すと、口の中が一杯になり声を出すことが困難になってきます。そして「チャビーバニー」と言えなくなった人は脱落し、最後まで残った参加者が勝者になるという、(とてもくだらない!?)ゲームです。そんなゲームですが過去には、12歳の少女が亡くなるという痛ましいニュースも「シカゴ・トリビューン(The Chicago Tribune)」紙が伝えています。
この美味しくフワフワのお菓子は、食べ方を間違えると窒息の危険性がある食べものでもあるようです。
また2017年、日本の消費者庁は「菓子や果物、パンなど食品を気管に詰まらせて窒息死した14歳以下の子供が、2014年までの5年間で103人に上り、うち約84%の87人が0~6歳の未就学児だった」との集計結果を公表しています。これは厚生労働省による「人口動態統計の死亡調査票」を分析した結果となっています。
また、年齢別では0歳が49人で最も多く、次いで1歳18人、2歳9人、3歳6人、8歳4人の順と公表。食品別ではマシュマロやゼリー、団子など菓子11件、リンゴなど果物5件、ホットドッグなどパン4件が件数として高かったのが減現状です。痛ましいことに日本においても、この美味しいマシュマロが窒息死の原因に成り得る可能性があるわけです。
万が一のときのために、「子供の窒息時の応急手当の方法」(参照:消費者庁)をご紹介しておきましょう。
まずは、119番通報を誰かに頼み、直ちに次の方法で詰まった物の除去を試みてください。
【1】背部叩打法(はいぶこうだほう)
…乳幼児では、口の中に指を入れずに、乳児は片腕にうつ伏せに乗せ顔を支え、また少し大きい子は立て膝で太ももがうつ伏せにした子のみぞおちを圧迫するようにして、どちらも頭を低くして背中の真ん中を平手で何度も連続して叩きます。なお、腹部臓器を傷つけないよう力を加減します。
【2】腹部突き上げ法(ふくぶつきあげほう=ハイムリッヒ法)
…大人や年長児では後ろから両腕を回し、みぞおちの下で片方の手を握り拳にして、腹部を上方へ圧迫します。この方法が行えない場合、横向きに寝かせて、または座って前かがみにして背部叩打法を試みます。
食べものはオモチャではないので、間違った方法で使用することは避けたほうがよいでしょう。生産者の意図とは反した使用では、せっかくの美味しいお菓子も台無しになってしまいますので…。
【4】マーガリン
アメリカでは「トランス脂肪酸」の食品添加としての使用を、2018年6月18日から原則禁止としました。「米国食品医薬品庁(FDA)」は、「トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂は従来から使われているが、安全が確認されている物質ではない」としてたのです。
最近、皆さんもこの「トランス脂肪酸」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
トランス脂肪酸を多く含むのが、「部分水素添加油脂」。この「部分水素添加油脂」はマーガリンの固さ調整に使われる原料として有名で、常温では液状をしている油に水素を添加して固形・半固形化した油脂のことになります。水素を添加する過程で、トランス脂肪酸が発生するのです。
そして「トランス脂肪酸」を過剰摂取すると、悪玉LDLコレステロールを増加させたり、心疾患や脳卒中、2型糖尿病といった疾患のリスクを高めたりする可能性が高いと指摘されています。
「世界保健機関(WHO)」は、「トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑える」という目標を示しています。さらに、「マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸を、2023年までに世界の食品から一掃する」ということを目指し、段階的な戦略も発表したことを米『CNN』は伝えています。
ただし誤解のないように説明しますと、日本の「食品安全委員会『食品中に含まれるトランス脂肪酸』評価書」によれば、日本人の場合はトランス脂肪酸の平均摂氏量が、総エネルギーの0.3%とWHOの目標を下回っていると報告されています。
つまり、過剰摂取にまでは陥っておらず、「脂質に偏った食事をしている人は注意が必要ですが、通常の食生活では健康への影響は小さい」と発表されている段階です。そして、「食生活の変化により、脂質の摂取過剰が懸念されいますが、トランス脂肪酸だけを必要以上に心配せず、脂質全体の摂取量に十分配慮し、バランスの良い食事を心がけることが大切です」と結論をづけています。