神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.114 ガルブレイス

2024-03-20 02:12:37 | 余録


 春闘の真最中です。
 その動向を見てと、日銀総裁が金利政策を変更するという記者会見をしました。しかし、金利だけで経済が決まっていくわけではありません。大事なのは実体経済、つまり国民経済の状態です。

 たとえば、60~70年代に比べたら、現在は格段に生活水準が上昇しました。同時に、生活維持費が高額になっています。
 昔も今も穴あきズボンを履いている人がいますが、昔は貧しかったからですが、今はおしゃれとしてです。
 加工賃を払える人がカジュアルと称して穴あきを履くと、その水準にない人がそれに慰められ、それなら自分も出きると、逆にまねて手元のものを自分で加工しだすわけです。それを含めて変化を見る必要があります。

 ところで、ガルブレイスという人を知ってますか。80年代に来日したこともあるアメリカの経済学者です。ガルブレイスが『満足の文化』(中村達也訳、新潮社、1993年)の中で「下層社会なしには社会は機能しない」と書いています。
 少し前のものですし、ちょっと長いですが、紹介しましょう。ヒマがある方はどうぞ。
 
 

 「・・・下層階級がより大きな経済過程の分かちがたい一部分となっている。・・・恵まれた人々の生活水準と快適さがこの階級によって支えられている・・・。・・・・下層階級は社会的機能に深く係わっている。・・・ところが、どんなに高級な社会的経済的議論も、この問題については沈黙を守っている。・・・苦難を救済できるような政治経済システムの構想が求められているにもかかわらず、満ち足りた人々の都合だけが社会の正面に出て、明瞭きわまる現実を押し隠しているのである。
 以上のような現実を認知するためには、仕事についてのおなじみの定義から始めるほかないだろう。・・・仕事とは楽しくかつ報酬を伴うものである。仕事とは、恵まれた職業に就いている人ならすべて、程度の差はあれ喜ぶべきものである。ふつうの人間ならば、自分の仕事に誇りをもつ。
 ところが実際には、繰り返し作業だけで退屈な、苦痛や疲れを伴う、精神的刺激もなく社会的品位のない仕事が多い。・・・様々な消費者サービス、家事サービス、農産物の収穫作業などである。また、組み立てラインに労働者を配置しているために、労働コストが最終生産物の価格を決める主要因であるような産業もそうである。仕事が楽しくやれるようになるのは、労働コストと価格とのこのような関連が無くなるか弱まった場合、あるいはより高水準の所得が得られる場合であろう。高給が与えられるのは、社会的に権威がありかつ快適な仕事であるということが、現代の経済システムの基礎をなしているにもかかわらず、そのことはめったに触れられない。こうした仕事は、他人の命令に従って行なわれる不愉快な仕事の対極をなしている。たとえば、ドアマン、家事、道路の清掃、ゴミ回収、守衛、エレベーター係などのような分野の仕事は、社会的に劣等であるというイメージが付きまとっている。
 仕事という語は、人によっては無味乾燥で、苦痛に満ちて品位のないものを指す。同時に、人によっては楽しく、社会的な評価が高く経済的な報酬も多いものを指す。・・・楽しく、報酬もよい仕事に従事している人は、いかに自分の仕事が「激務」であるかを強調して、自分たちが恵まれた階級であるという事実を隠蔽しようとする。・・・決定的に重要な瞬間、たとえば犯罪者に判決を与えるときなどには、われわれは、何年かの「重労働」を言いわたす。われわれは何が楽しい仕事であり、何が大なり小なりの忍苦をともなう仕事であるかを、いつもごまかそうとするのである。
 以上のことから、現代の経済社会の基本的事実の一つが明らかになる。つまり、われわれの経済においては、誰からも嫌がられる辛い仕事を、恵まれた人々がやらずに貧しい人々がやらなければならないということである。そのような労働者の供給と補充がつねに必要とされる。肉体的にきつく、社会的に受け入れられず、快適ではない職業についている親たちは、子供の世代に跡を継がせようとはしないからである。子供たちは、肉体労働から逃れてもっと快適で報酬のいい生活を送る。あるいは、そのための努力をする。・・・一般に教育が目指しているのもそうした方向である。しかし、そのために、労働力補充の必要が生じ、不愉快なことではあるが、下層階級の一部を引き続き従属的な地位に止める必要が生じるのである。」

 だいぶ長くなりました。どうですか。
 春闘は、メデタク正職員になっている人達が中心です。非正規や外国人実習生などはどうでしょうか。社会全般の状態に目が向けられないと、落ちこぼれが必ず出ます。これまでずっとそうでした。いまも年金生活者などには目が向いていません。
 もうしばらく見極めが必要です。

 今日は、パソコンの状態が悪く、難儀しました。
  


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« No.113 金環食 | トップ | No.115 人名録 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

余録」カテゴリの最新記事