早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年二月 第二十七巻二号 近詠 俳句

2022-02-10 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年二月 第二十七巻二号 近詠 俳句

   近詠
冬うらゝ河岸は柳の潤へり

濱木綿の日南たしかや陶の蟹

應接室の正月畫報古りにけり

寒曇り艇來て障子ひゞく裡に

鳥籠の空を重ねて寒日南

徹宵す川より暁けて霜の船

雲凍てゝ他所に變りし航空路

風花か煤か暮光の川にあり

來客がしづかなといふ水仙花

行人の知らず寒の日いま沈む

春近く檪は枯るゝほしいまゝ

春の眼が雲の晴れ間の星にある

狸汁や燈に咲く街の數奇料理

寶塚の夜の卓上の冬薔薇

竹の奥わづかそよぎて寒の山

寒椿日照れば山をいちめんに

枯れしもの芭蕉ほか無く雪の松

   能樂 實生重英の藤戸を観る
凍つさまに藤戸の母が泣き跼み

   映畫 むかしの歌試冩會
絲竹にむすめのやるせ雪降りて

   日本精神宣揚
黙祷に國事いまあり寒稽古

   残菊
残菊に棲む林泉の主かな

残菊にかゞやく朝日次の奥

   草の實
草の實の朝な朝なの露ふとり

草の實の露ふくみたる若さかな

海遠き音艸の實のかゞやきて

草の實に鳥のよろこび解りけり

    凧
凧の吹き變りたるや石の面

凧の壁に西日の去りにけり

   早春社新年本句會  作題 元日 二日 三日 四日 五日
    嘉例宋斤先生の年頭百句近詠の一句一句を揮毫されたる壽盃で俳句精進を誓って乾杯。
   元日
元日や畠の空に雲まろし

   二日
片戸してもの賣る燈二日かな

   三日
山鳥の貰ひし吊す三日かな

   石澄の瀧吟行
   宋斤夫妻 沾之 月蝶 箕峭 竹右 青石 
小正月山の日南をさしてゆく

正月や櫻艶肌塘に縫ふ

   佛日寺
こゝらまでは會遊それから山の雪

櫟ほど枯れたるはなし山ぬくゝ

   石澄の瀧
雪の鳥俯下に谿水失ひで
  
   聖天堂 
寒餅を搗いて雪山孤堂かな


 













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