早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十四年三月 第二十七巻三号 近詠 俳句

2022-02-11 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十四年三月 第二十七巻三号 近詠 俳句



    近詠
春來り促すものゝ空にある

友達ゆ早春の野に歩が合うて

朝びとの澄みて丘ゆく春浅し

日のひかり残寒梅の凪ぎきりぬ

三月や散らぬ櫟の枯れ景色

桟庭に冬を越し來し著莪の情

朝東風をふゝむ茂りの福壽草

ねこ柳書信の債をほゝけゝり

春愁は莟のこささず椿咲く

ふるさとを遠くいふ人春の空

旅に來て市場通れば諸子魚生く

寄り合ふて句なしはさみし白魚鍋

春月にながれやすくて雲うすし

舟貸して川にはたらく春の人

猫の子に障子傷みも川日射し

奉天の野の草の種種ふくろ

春の蝿鉢木を飛んで紛れけり

寸緑の潔きかな蘩蔞ぐさ

春泥に鉛筆さゝり落ちてあり

春の湖汽車のめぐりてなほ失せず

貸す借らぬ春雨傘を門口に

大阪市隣り布施市の蓬萠え

春磧ものみな光り鳥の飛ぶ

一木を背に試験子の二三人

卒業やゆくに満州北支あり

春の砂のいのちぬくゝて指を漏る

春の雨馬の睫にしづくして

槍掛けの袖がらみ春の埃なり

春日南頬くる風の眼に涼し

   六橋觀偶會  ”冬の凪 ”残菊
冬凪の上舞ふ鳥減り増えつ

残菊のもとにつまむや蝸牛

残菊を風ぬけて行くさやかにて

   水仙
水仙花寺内の音の定りて

神の前水仙花咲くに往き跼む

水仙や脚に風くる谷の風

    密柑
密柑山ふかふか入って海の音

友の家久になつかし密柑成る

密柑たわゝ潜って雪の日南哉

   早春社二月本句會  兼題「冬果つ」席題「春來 早春社樓上
たゝずめば野の風失ぜて冬の果て

枯れ長がに草露とあり冬の果て

門前の雪に跼みぬ冬はつ日

春來つる草の實枯れの春いて

鳥のあと木の葉の生きて春來る

春來つる南たゝみにけふの雲

   晴明會一月例會
渚ゆく燈も舟なりし千鳥哉

波の秀にまぎれ日の出の千鳥哉

廂にも臼にもなしや風の花

風花の空には見えて入江波

早梅やつらゝの宮をすぎてより

   尼崎小田一月例會 兼題「寒月」 席題「凧」
凧あげむ日の空すでに鳶舞へり

風うれし地に置く凧のおどる哉

寒月や橋下覗いて舳艫込む

寒月や家々の寝て町正し

寒月や筧の瀧の練り落ちる

   大仙陵を中心に 早春社如月吟行
春の水汀に波し濁りけり

風光る五稜の前の旗竿に

大枯れの雨後のしたゝり春來り  

耕人の遠き御陵の水光り

野を村に入りて早春柚黄なり

如月や陵前すゝむ砂しめり

梅早し雀の壺を枝に見る

陪塚の家裏に住めり下萠ゆる

森茂りみなみささぎや春の雲

藤豆に風のあるなり春の雲

早春の水の小ゆれて風のゆく

   百舌鳥神社
村春や苗の障子を貼り立てゝ

藁塚崩れすでに春泥したりけり

如月の椿若木の肌かな

竹秋をしそめて鳥こぼしゐる

福壽艸の日は水仙になかりけり

雪みちの人に渡舟の待てるかな

胸を背を焚火去らんとかざしつゝ 




















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