新年度を迎え,ニュースには新入社員の入社式の映像が多く流れています.New faceは新しい細胞として,社会のシステムに対して少しずつですが影響を与えていきます.そのさい,上司からの軸索の伸長が彼ら彼女らの樹状突起と結ぶと新たな結合が生まれます.これは逆もしかり.新入社員自らが軸索を伸ばすように.いずれにしても双方向性の結合が起こることで,新たな神経ネットワークの働きに生まれ変わっていきます.組織が大きくなればなるほど,その影響は微弱なものから始まりますが,小さいところではすぐさま構造にも大きく影響を与えるでしょう.子どもの発達における柔軟性と同じように,まだ構造が完成していない場合はNew face一人一人の仕事が大きく組織を動かす原動力になります.研究会発足なども同じことがいえます.
大きな組織では,そのような変化がもたらされないかというと,この際,組織が大きければ,実際メインに機能しているルート以外の領域でどのように静かに結合していくかが実は発達において重要と考えられます.つまり,細胞一つ一つのネットワークではなく,小集団同士のネットワーク構造化です.最終的には遠隔地同士で小集団がコミュニケーションをとりはじます.太陽系とそれ以外の系とネットワークを結び交信するようなものです.そう考えると宇宙は魅力あふれる科学材料ですね.
さて,New face自らが組織にどのように貢献・関与していくかは,やはり「自らが動く」という視点です.どのような生物であれ,その生命は動きからつくられます.「動きが生命をつくる」のです.だから,「動きが脳をつくる」といっても良いでしょう.私たち大人は心を持ち得ました.だから,なんとなく心が動かなければ身体が動かないという二元論的な意識を持っています.しかし,生まれたての赤ちゃんがすでに我々大人と同じような心を持ち得ているでしょうか.心は身体による動きから生み出してきたのではないでしょうか.赤ちゃんの一見無意味に思える(大人の目線でありますが)動きが心を形成していく上でとても大切です.動くことで心が宿っていくのだと私は思うのです.
もちろん,脳―身体―環境の相互作用の視点は大前提ですから,脳があって心を生み出して,そして身体を動かすといった二元論的な視点ではないのです.手を動かす,物を見つめる,足をバタバタさせる.そうした動きが我々の生命をつくる.これは胎児内でも同じことがいえます.特にその色は外界がないため強いでしょう.「動き」とは私たち生命体にとってとても重要なものなのです.
動くことから新年度はじめてみてはどうでしょうか.そして,その時,「感じる」という脳の機能(内感)も置き去りにせずに. 動かない患者さんに対しては,患者さんの機能・能力任せや拘束せずに,動かしてあげてください(不快な刺激でなく).そして,同じく動きから身体を感じさせてあげてください.