blog Donbiki-Style

筆者:どんびき(地域によりカエルの意)

幼稚な平和主義者

2017-08-23 21:14:02 | 日記
私も当地に来て間もなく二年、特に大きな担当替えはなく、年長の社員氏一人とコンビを組んで同じ仕事を二人で協力してやってきた。
当初、つまり私がまだ仕事に慣れず氏の指導が必要だった頃は取り立てて関係に大きな問題はなく、お互いに共通する趣味もあったりなどでむしろ極めて良好な状態にあった。
人柄は一貫して変わらないが、取り立ててクセはなく穏やかで、唯一年齢にそぐわないような軽い物言いが気になる程度であったから、感情的になってぶつかる場面もなく仕事も順調に回っていた。

それが少しずつ変わり始めたのは、一緒に会社の外で飲み始めるようになった頃からである。
お酒はどちらも嫌いではなく、日本酒やワインが苦手な私はそちらは敬遠しつつ、互いに飲むとなればかなりの量をいくことが多かったように思う。
飲めば当然歌の一つもひねりたくなり、勝川地区にある旧市街の老舗スナックに入った。
お互い酔っているし、さほどお客も多くなく歌の順番などすぐに回る。
私も好きなものだから歌いたい歌を歌ったら、機械の採点で97点が出てしまった。
周囲のお客さんからも拍手を受け恐縮しきりだったが、となりにいた氏の顔がなぜか笑っていなかった。

そのあたりから、氏の私に対する態度は微妙に変わり始めた。
ちょうどこの頃には私も仕事にすっかり慣れ、同じ内容の仕事を同じようにこなすことができるようになり、時には先回りをして前がかりで氏のフォローにあたったこともあった。
しかし、私の力が氏に追いついて来たと感じたからかは知らないが、その頃からは二人で協力すれば早く済む仕事もなぜか一人で抱え込んで、情報もこちらにくれなくなる場面が増えた。
ちょうど一年ほど前には、何が気に入らなかったのか、当たれば間違いなくケガにつながる作業道具を当方の足元に向けて思い切り転がして来た。
気に入らないことがあるなら言葉で言えばいいものを、気づかずに当たれば骨折もありうる工具を投げるように足元に転がすなどおよそ尋常ではない。

それ以来の一年は、氏とどうやって付き合っていいものか分からなくなり、本心を探りたい、もっと言えば怒らせて腹の中を出させたいという一心であえて意地悪なものの言い方もしながら挑発ぎみに接することも増えた。
平和主義者を自認する氏は、私のような気性の荒い年下の生意気な社員から相当失礼な扱いを受けても顔こそムッとしているが大きな声も出さずにこらえているようには見えた。

しかし、ここ数日でお互いのモヤモヤはついに爆発して、結局はすべて二人で協力してやって来た仕事(仮にABCの3種があるとする)を、Aは氏が、BとCは私が、という形で完全に分担することで話がついた。
氏はもう六十の節目を超えているため、直属の上司が体力的な負担も考慮して私を氏の下に付けた経緯があるのだが、その意図は水泡に帰し、氏が私を自らを脅かす存在として煙たがるという幼稚な思考に思い至った結果、体力的にもやや負荷の大きい毎日を自ら選択することになったのは皮肉としか言いようがない。

もし、氏に体力的な問題が生じたところで氏が選んだ道なので私は一切同情も関与もしない。
たまたま下についた社員が自分を追い越すことを喜ばないような狭量な人間のできることなどたかが知れているのである。

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