昼休憩が終わったら缶コーヒーを一本グイっと飲み干して午後の仕事に向かうのがルーティンである。
財布をのぞくと小銭は新500円貨しかなくいまだに我が社の自販機は非対応のため使えない。
仕方なく1000円札を入れたら反応せず戻っても来ない。
入れるときに端が少し折れ曲がっていたから詰まってしまったようだ。
困ったなと思って事務所を通じて業者に電話をしてもらうかもらわないかのタイミングでなんと業者さんが現れた。
業者さんは補充とゴミの回収が目的で毎日訪れるわけではないのに何という幸運、詰まった1000円札も無事に戻ってきたので重々お礼を申し上げて午後の仕事に向かった。
さて、毎日同じ場所でかれこれ一年以上働いているというのに、いまだに仕事を離れた時の姿がサッパリ想像できない人がいる。
なぜできないかと言えば、休憩時間に周囲と決して交わらないからである。
我が社には冷房も効いてテレビも見られる休憩室がちゃんとあるからそこで休めばいいと思うし現場ではできない話も当然ながら出るから休憩室は一定のコミュニケーションの場として立派に成り立っている。
それを決してそこには来ないでわざわざ自分のクルマに戻ってエアコンをかけて過ごし無用なガソリンをばらまいて仕事に戻る。
休憩室の利用は必須とはなっていないのでどこで休憩しようと自由は自由だ。
しかし、皆が集まる場であえて休憩しないのは一言「できない」からである。
休憩室に来ないで休憩するのは確認する限りでは単独ではなく二人ほどいる。
そのどちらもが今どきで言うところのパワハラ気質で弱い立場や事情が分からない者に対しては滅法強い。
ちょっとしたことですぐにガナり立てる性格はとっくにバレていて周囲から敬遠されているのは当人たちも分かっている。
自分たちを嫌っている人間が集まっていると分かって休憩室に行くなど当人たちにとっては怖くてとてもできないというのが本当のところなのだろう。
この両名は特に管理的な仕事をするわけではないのになぜかけっこう威張っている。
現場の管理全般は社長から指名された若きリーダー氏がその責を担っているから当人たちが何と言おうと実質はリーダー氏の指示を聞いて動いているだけである。
だからかどうか知らないが、両名の表情はいつもとても暗く退屈そうで不満もにじむ。
若い社員にあらかたを仕切られるという、よほどのことがなければ変えられない現状が本音では不満で仕方がないが残念ながらリーダー氏を上回るような能力もなければアイデアもない。
積もり積もってしかしどこにも持っていきようのない感情が時に弱い者に対して向けられる、と考えれば一連のパワハラまがいの言動も納得がいく。
この両名のような、ひとりの人間としての生きる楽しみはすでにどこかに置いてきてしまいもはや弱い者イジメが人生の楽しみになっているようにすら見える人間にはお気の毒以外の言葉が見つからない。
楽しいこと、ありますか?と面と向かって聞かれたところできっとすぐには言葉は出てこない。
堂々と胸を張って「楽しみは弱い者イジメです」とはさすがに言えないから黙り込むしかないわけである。
人生を楽しくするためには、明るく生きる、たったこれだけで足りる。
しかし、いつまで経ってもジメジメネチネチ暗くて湿っぽい心持ちのままでは毎日が楽しくなるはずもなく、楽しく生きている人間がうらやましいだけになり、こうなるともう悪循環そのものである。
こちらとしてはそういう負のオーラに引きずり込まれることのないように、明るく楽しく日々を過ごしていきたいと思う。