我が現場は構造上「ここに行けばこれがある」ということにはなっていない。
出ていくもの入ってくるもの、またその分量も日々違うので同じ場所でも昨日あったものと今日あるものが違うことは珍しくない。
成り行きにより、棚の中の見ばえがやや不格好になることもあるのは仕方がない。
不格好になれば整頓するのがメンバーの一つの役割でもあるが、ずいぶん前のたいそうヒマなある日、通常なら整頓には参加しないメンバーにも覚えてもらおうということで、ある人が責任者から声がかかってやり始めた。
すると、全く同じ製品が離ればなれになっていたので並びにできないかと日ごろ整頓をしている某メンバーに申し出た。
だが、返ってきた答えは「事情が分からない人間はヘタに触るな」という何ともつれないものだった。
今までやったことがないからやってみましょうと言われて初めてやっている人に対する答えとしてはあまりにも冷たいと感じたものである。
私は横にいて見学しているだけであったが、ちょうどタイミング的には各列の「空き数」をカウントした直後であった。
毎日のカウントに基づいてその日の入荷物の入れ場所を決めるのだから、心情的には並びにしたくなるモノであっても空き数カウント後にそれが変わるような整理をしてはせっかくのカウントが無駄になってしまう。
だから、初めて挑戦している人に対する答えとしては「気持ちは分かるけど、空き数を調べた直後だからタイミングとしてはNGだね」と言えばよかった。
我が社は運送屋さんでもあり倉庫屋さんでもあるが、盆前にあった宴会に参加した時、倉庫メンバーは幹事と私だけであとはドライバーさんだった。
気の張らないメンツというのは本当で、ずいぶんカラッとした雰囲気を感じたものである。
となりの芝生は何とやらなのかもしれないが、私のいる倉庫はドライバーさんの世界とは違って何とはなしにジメジメとした雰囲気があると常々感じていたし、それは今も変わらない。
上に書いたやり取りでも分かるように「事情が分かる人間が増えすぎては困る」と思っているメンバーが確実に何人かいるのがその原因である。
みんなが少しずつでも新しく仕事を覚えて全体として徐々にでもレベルアップすれば日々の仕事も早く終わることができてラクだなどという発想は毛頭なく、自分たちが主導権を取れる状況が少なくなってしまうことを恐れているようにしか思えない。
職場そのものや日々の仕事に関しての情報が、仕事をしていてあまりにも流れてこないと感じているのは私だけではないはずである。
情報をあえて流さず自分たちだけで抱え込んで自分たちの思い通りに職場を動かしてやろうという、ある種の特権・権益が自分たちには「ある」と信じているようだ。
だが、歴の浅いメンバーとて人生経験は長いのでそのあたりのことは薄々でも気づいてはいて内心かなり不満はあるのが分かる。
日々懸命に前向きに動いているように見える他のメンバーも、実は彼らに無用にオラつかれるのがイヤで仕方がなく動いているに過ぎない。
両手にもならない数のメンバーのごく一部とそれ以外の間に残念ながらこれほどまでに深い溝ができてしまっている現状では、カラッと明るい雰囲気になどなりようがない。
今の今まで自分たちだけが心地いい生ぬるい空気の中で仕事をしていきたいと思い、空気を変えそうな人間はあらゆる手を使って排除してきた集団が強いものであるはずがない。
人が足らないなりに強い組織であろうとすればひとりひとりが全ての担当をひと通りできるくらいでなくてはいけないのに、いつまでも自分たちだけ現状維持で、面倒なことは下にやらせればいいというのでは組織としては弱る一方、自ら滅びを選択しているようなものだ。
我が現場は、短期的には人が足らないなら「補充」もいいが、中長期的には人の大幅な入れ替えも含めた「補強」が必要な段階にどうやら来ていると言わざるを得ないのである。