秋祭りの準備が一段落したので、昨日は久しぶりの映画館へ行った。
外はまだ暑かった!
映画は大阪ステーションシネマでやっていた「2度目のはなればなれ」だった。
「2度目のはなればなれ」 2023年 イギリス
監督 オリヴァー・パーカー
出演 マイケル・ケイン グレンダ・ジャクソン
ダニエル・ヴィタリス ヴィクター・オシン
ウィル・フレッチャー ローラ・マーカス
エリオット・ノーマン
ストーリー
1944年6月6日、フランスのノルマンディー海岸で決行された「Dデイ」と呼ばれる上陸作戦は、第二次世界大戦において勝機が連合国側に大きく傾いた分岐点となった。
この作戦から70年目の2014年6月6日に、元戦地ノルマンディーで各国首脳の列席のもと記念式典が開かれることになった。
イギリス・ブライトンの老人ホームで人生最期の時を過ごすバーニーとレネの夫婦が取ったある行動が世界中でニュースになる。
70年前のDデイでイギリス海軍下士官だったバーニーは、イギリスの町ブライトンの高齢者施設を無断で抜け出し、フェリーに乗り込みドーバー海峡を渡ってノルマンディーを目指したことが判明したのだ。
捜査にあたった警察は、SNSでハッシュタグ「#TheGreatEscaper」を付けて行方をツイートした。
“脱獄もの”映画のクラシックとして名高い『大脱走』(1963)の原題(The Great Escape)をもじったこのハッシュタグは瞬く間に拡散。
ところがスマホを持たずSNSとも縁遠いバーニーは、自分が一躍時の人となっていることをまったく知らない。
2人が離ればなれになるのは、人生で2度目。
決して離れないと誓った男が、妻と離ればなれになったのにはある理由があった・・・。
寸評
何か大きな事件が起きるわけでもない静かな映画だ。
主人公のバーニーが旅している所は第二次大戦中に激戦が行われた場所だ。
海もノルマンディーの海岸も美しい映像でとらえられていて、世の中は平和でなければいけないと感じさせる。
バーニー夫婦は歩くのもままならなくなってきている老夫婦だ。
今でも愛と信頼で結ばれている素晴らしい夫婦と言える。
映画の一方はこの老夫婦の愛情物語でもある。
交わされる会話がウィットにとんだものでイギリス映画らしい。
派手な作品が多い昨今だが、僕はこのような静かな作品が好みである。
バーニーは戦場で経験したことを妻のレネに話していなかったのだろう。
レネは、はなればなれになっていたバーニーが戦場から帰ってきた時は固まっていたと言う。
過酷な経験をしてきたことを察したレネは何も聞かなかった。
バーニーが心に秘めていることがあると悟ったレネは申し込みが遅れたバーニーにDデイの式典に行くべきだと告げる。
そしてバーニーは誰にも告げずフランスへ旅立つ。
施設の人たちは大騒ぎするがレネはお見通しでとぼけている。
レネのバーニーに寄せる信頼の度合いが感じられる。
バーニーは途中で、やはり第二次大戦で空軍パイロットだったアーサーと知り合うのだが、このアーサーという退役軍人もなかなか良い人で、同じ境遇を辿った人ならこんなにも親切になれるのかと思ってしまう。
ふたりが秘めた思いがもう一方の物語である。
アーサーの弟はレジスタンスに助けられてある町まで逃げて来ていた時、アーサーはその街を爆撃して壊滅させ、弟はそこで亡くなった。
もしかすると自分が落とした爆弾が弟を殺したのかもしれないとの思いがある。
バーニーは戦友が戦死したのは自分が励まして送り出したからなのではないかと思っている。
二人には悔恨と贖罪の気持ちがある。
バーニーは亡くなった仲間を弔うためにDデイの記念式典に参加しようとしているドイツの退役軍人と出会う。
そしてお互いが同じ戦場でまみえていたことを知り慟哭するドイツ人を、バーニーは手を取りお互いに無言で慰め合う。
そしてお互いに生き延びて良かったなと敬礼を交わす。
感動的な場面で、やはり平和でなくてはいけないと痛感するいいシーンだ。
二人はためらいながらも、それぞれの相手が眠る戦没者の墓を訪ねる。
やっと胸につかえたものを取り除くことが出来たのだと思う。
レネが言うように、亡くなった者は運が悪かったとしか言いようがないのが戦争なのだろう。
バーニーは「無駄な死だ!」と叫ぶが、全くその通りだ。
元アフガン戦争兵でフェリー従業員のスコットという若者も登場するが、彼ら退役軍人が抱えるPTSDのメンタルケアというシビアな問題も提起されている。
レネは2回目のはなればなれを経験したわけだが、次は私もいっしょに行くと言う。
実話の映画化で、バーニーが逝った後すぐにレネもなくなったことが知らされる。
レネは本当に一緒に行ったのだと思う。
二人は些細なことをしながら過ごしてきたのだろうが幸せな夫婦生活だったと思う。
イギリスは福祉が充実しているのかもしれないが、あのような施設があるなら僕も入所しても良いかなと思ったりした。