
東日本大震災と福島第1原発事故のことを伝える講演会が6月29日、京都府向日市物集女町の第2向陽小であった。避難者グループ「みんなの手」代表を務める西山祐子さんが、震災直後の状況や福島の現状などを語った。
西山さんは2011年6月、福島市から京都市へ幼い娘らと避難した。同12月に避難者と支援者を結ぶグループ「みんなの手」を立ち上げた。今年5月には避難者の就労支援や地域交流を目的に、みんなの手が運営する飲食店「みんなのカフェ」を伏見区両替町にオープンした。
講演会は2向小PTAの教養委員が企画した。児童や保護者、地域住民合わせて46人が参加した。
西山さんは、震災直後、「地震が怖い」と言う娘を安心させようと、外遊びなど普通の生活を送ることを心掛けた。だが、原発事故で福島市の放射線量は11年3月15日に通常の600倍超の値を記録。当初の避難先の東京に向かう飛行機から福島の景色を見て「美しい故郷が震災で汚れてしまったと涙が出た」と振り返った。
その後、東京から京都に移住した。「高速道路の京都の表示を見た時、本当に安心して暮らせると感じた」とし、「いま活動していられるのは、温かく受け入れてくれた京都の人たちの思いがあったから」と話した。
福島の現状について今春から農家支援で学校給食に福島産食材を使うようになったことを紹介。しかし、基準値以上のセシウムが検出される時もあり、基準値以下になるまで何度も検査を繰り返すため、児童は昼食時間帯に食事ができない日があると語った。
放射能除染では中間置き場や最終処分場が決まっていないことから、放射線量の高い土を家の前に置いておくしかない状況を説明。甲状腺がんの疑いがある子どもも出ているといい、「原発事故由来かは分からないが、不安に思っている親は多い。震災や被災地などに関する報道は少なくなっているが、原発事故は全然終わっていない。まだ福島には帰れないと思う」
一方、西山さんは震災や原発事故の経験から「自分の身は自分で守る」ことを伝えたいと話した。福井にも原発があると指摘した上で「事故があったらこうしようと日頃から思っていることが大切」とし、事故が起きたら一時的でも待避する▽情報を得る▽線量低下まで屋内待避する▽換気扇を閉める-などの対応策を紹介した。
また、「母親は意識を持って子どもを守る気持ちになって」と参加者に語り掛け、最後に「自然豊かな日本を未来に残していくために何をすべきかを、それぞれの立場で考えなければいけない」と強調した。
グループ「みんなの手」などは、京都に避難中の子どもと福島の友だちが夏休みに再会する取り組みへの支援を募っている。
連絡はみんなのカフェTEL075(632)9352。
【 2013年07月02日 11時30分 】