京都府向日市が国の歴史まちづくり法に基づく計画(歴まち計画)認定を受けて半年が過ぎた。長岡宮をPRするロゴマークを募ったり、西国街道を石畳風に舗装する工事設計に着手するなど、「長岡宮のあるまち」のアピールに向け動き出しており、住民側もまちづくり構想を市に提言するなど、機運が高まりつつある。だが、長岡宮の中心が隣の長岡京市にあったと認識している人は多い。ハード整備に加え、市職員や市民一人一人の発信力が問われる。
「あの長岡京の中心地は、向日市にあった!」。市が作製した長岡宮ロゴマークのPRポスターにはそう書かれている。天皇が政務を執った大極殿は、現在の同市鶏冠井町にあった。現在は大極殿公園として史跡整備はされているものの、そこに誘導するための観光案内板は不十分だ。
貴重な歴史遺産をまちづくりに生かすための仕掛けが求められている。市は今後10年間で阪急西向日駅から長岡宮跡、向日神社へのルート整備や、江戸期の旅籠(はたご)・富永屋の観光情報発信拠点化などの事業に取り組む。すでに会員制交流サイト「フェイスブック」の公式ページを開設したり、市職員から市のキャッチコピーを公募するなど、一歩を踏み出した。
観光客を呼び込み、にぎわいを生み出すためには、発信力の向上が欠かせない。
「この数字、何か知ってる?」。今月中旬、安田守市長は「784」の背番号が書かれた京都サンガFCのユニホームを身につけ、市職員に尋ねて回った。長岡遷都の年号だが、首をひねる職員も多くいたという。安田市長は「まずは職員一人一人が意識を変えていかないと」と課題を見据える。
住民側にもまちづくりに積極的にかかわる姿勢が求められる。3月に西向日駅周辺のまちづくり構想を提言した「長岡宮まちづくり協議会」の片岡長久会長(76)=鶏冠井町=は「向日市はまちづくりに取り組む人が少ない。行政と市民がうまく連携しないと、いいまちはつくれない」と訴える。
市内には大規模駐車場はなく、狭い道路が多いため大型観光バスの通行が難しい。宿泊施設もない中、どういった観光を目指すのか、将来ビジョンの提示は不可欠だ。市企画調整課は「今後策定する観光振興プランなどで方向性を示したい」としている。
【 2015年08月25日 10時00分 】