認知症の高齢者が外出して行方不明になるケースが多発する中、京都府向日市では恐れがある高齢者の写真や特徴を記した「『要救護者』情報シート」 を事前に作成する取り組みを進めている。不明時に向日町署や協力機関にファクスを送り、迅速に捜索が開始できる。一方で登録者数は19人にとどまり、関係 者は「早期に動くことが命を救うことになる。万が一に備えて登録してほしい」と呼びかけている。
「徘徊(はいかい)しても安心なまち」を目指し、乙訓地域では向日市の地域包括支援センターが、2011年に初めて導入した。
11年2月に実施した徘徊する高齢者を捜索する訓練で、警察や福祉など関係者だけでは限界があることが分かった。そこで地域に協力してもらおうと、先進地の福岡県大牟田市を参考にして仕組みを作った。
情報シートには氏名や性別、年齢のほかに身体や会話の特徴、よく行く場所などが記され、顔写真と全身写真が掲載されている。
捜索の初動が遅れると遠方まで行ってしまい発見は困難になる可能性が高い。家族への聞き取りや写真の手配などを省いて、捜索開始までの時間を短縮するのが狙いだ。
不明になった際には医療機関や福祉施設、日ごろに行くような地域の商店、外回りが多い新聞販売店など計165協力機関にファクスで捜索への協力を求める。発見されれば、ファクスはシュレッダーで破棄してもらう。
個人情報を取り扱うため、家族の同意が必要となる。地域包括支援センター職員のほか、普段から対象者に接しているケアマネジャーの協力を得て同意を得ている。
だが、登録者数は19人と伸び悩んでいる。過去には行方不明になって死亡して発見される例が乙訓地域であり、最悪の事態を避けるためにも登録者数をいかに増やすかが課題となっている。
捜索の中心となる向日町署は情報シートについて「早期の発見につながる効果的な仕組みだ」とする。
向日市中地域包括支援センターの石松友樹センター長は「理解を広げる努力をして協力機関も増やし、地域全体で見守る優しいまちづくりを目指したい」と話している。
相談は同センターTEL075(921)1550。
【 2014年05月28日 09時48分 】