京都府長岡京市職員が認知症の市民への対応向上に力を入れている。市は初めて、全職員を対象にした認知症サポーター養成講座を職員研修の一環として実施。認知症に対して理解を深めることで、より充実したサービスにつなげたい考えだ。
高齢化の進展に伴い認知症の人数も増加している。65歳以上の15%が認知症とされ、軽度も含めると4人に1人が認知症か予備軍とも言われる。認知症を原因とする徘徊(はいかい)も全国で多発しており、市内では昨年度、行方不明事案が7件起きた。
市役所の窓口にも認知症と思われる市民から、保険証の紛失やごみ出し日の問い合わせなどが寄せられることがあるといい、市職員が適切な対応をとれるようにするため職員課と高齢介護課が研修を企画。長岡病院(同市友岡4丁目)の医師や看護師を講師に招き、サポーター養成講座を計10回開いた。
昨年12月19日の講座では、同病院看護師の丹上幸子さんが、認知症は出現率が75歳から急速に高まることを紹介。中核症状として現在の年月や時刻、居場所が分からなくなる「見当識障害」と「記憶障害」があると説明した。
また、認知症予防には脳の活性化が必要で、会話などで脳を刺激する「なじみの関係をつくっていくことが大切」と強調。同病院では、同じテーブルと席を使ってもらうことで利用者同士が顔なじみとなり、安心な関係を築く取り組みをしていることを話した。
さらに、トイレットペーパーを便器に詰め込んだり、自分と他人の区別なく物を集めたりする認知症の行動例を紹介した上で、「日々、大変な思いをしている家族への援助も考えていかねばならない」と語り、市職員は真剣な表情で聞き入った。
受講は正職員357人が対象で、再任用や嘱託職員も来年度以降に認知症について学ぶ。市は「公務員一人一人が認知症に対する正しい知識を持ち、偏見を持たずに対応する姿勢が求められている。研修を窓口対応などに生かしていきたい」としている。
【 2015年01月31日 11時25分 】