
京都府大山崎町は、2020年の東京五輪・パラリンピックの選手を迎え入れる「ホストタウン」の2次登録を目指している。1次登録で選ばれなかった反省を踏まえ、大山崎山荘を建てた大正―昭和の実業家・加賀正太郎とゆかりのあるスイスを相手国にした新計画書を政府に提出した。「フェンシングのまち」を掲げ、雌雄を決する場面の代名詞「天王山」を有する自治体をPRするための目玉施策だけに町の働き掛けは熱を帯びている。
ホストタウンは、五輪開催の経済効果や国際交流を全国に波及させることを目的に政府が進める事業。市町村などが国に交流計画を提出し、ホストタウンに登録されると、国から交流や施設改修に必要な財政支援を受けられる。
昨年12月に1次登録の申請が69件あり、京丹後市など44件が選ばれたが、名乗りを上げた大山崎町の登録は見送られた。当初計画でフランスやシンガポールなど複数国を列挙して相手国が絞れていない印象を与え、計画内容の不十分さなどが影響したとみられる。
2次での登録申請を目指す町は、スイスを交流相手国に絞った新たな計画を策定し、今月中旬までに国に提出した。同国には町と同様に地域にフェンシングクラブがある。また、アルプス山脈の「ユングフラウ」を日本人として初めて登頂した加賀正太郎がスイス人の親戚を持つなどゆかりがあるからだ。
「登録は受け身では駄目。攻めの姿勢が必要」(町幹部)。町は申請前の4月、アサヒビール大山崎山荘美術館創立20周年記念式典に訪れた加賀の子孫に接触し、協力を呼び掛けた。その後、東京の在日スイス大使館を訪問。町の歴史や文化、スイスとの縁を紹介し、ホストタウンとして迎える意思があることを伝え、スイスの関係者から「計画をサポートしたい」と前向きな返答を得たという。現在はスイスフェンシング協会などと継続的に英文メールや国際電話でやりとりを重ねる。
町は、スイス選手団の事前練習場として、改築工事を予定する町体育館を提供する考えだ。交流計画には、スイスの言語を学ぶセミナー開催や、両国のフェンシング大会における選手間交流などを盛り込んだ。
2次登録の発表は6月上旬で、登録されなかった場合は11月に3次登録がある。舞鶴市や滋賀県が2次登録申請を表明しており、国や競技が重複すれば競争が激化する可能性もある。
ホストタウン登録は「天王山」を旗印とした施策を打ち出す山本圭一町長肝いりの施策の一つ。町内にはロンドン五輪銀メダリストの太田雄貴選手を輩出したフェンシングのチームがあり、登録で五輪選手との交流を願う関係者の声も聞かれる。登録されれば今後、住民を巻き込んだ交流の仕掛けづくりや町を挙げての機運醸成は欠かせない。
「京都フューチャーフェンシングクラブ」コーチの安養寺弘樹さん(29)=同町円明寺=は「(ホストタウンに登録されれば)フェンシングに励む子どもたちが、レベルの高い海外選手の練習方法を肌で感じられる絶好の機会になるはず」と期待する。
【 2016年05月25日 10時43分 】