
「西国街道ひな人形めぐり」イベントが、京都府向日市から長岡京市にかけての店舗や旧家などで開かれている。それぞれの飾りには家族の思い出や子の成長を願う気持ちがこもり、華やいだ雰囲気から春の訪れが間近なことが伝わる。
向日市寺戸町の富永屋を向陽小1年児童が24日、見学に訪れた。授業では折り紙でひな人形を折った。作品は鶏冠井町の旧フジヤで、絵手紙サークル「ひまわりの会」の作品といっしょに3月3日まで展示されている。
閉店した鶏冠井町の仕出し料理店もウインドー越しに男女びなや屏風(びょうぶ)を飾り、通行人を楽しませる。
向日町の瀧本金物百貨店には五段飾りが置かれた。瀧本佳子さん(68)によると、47年前に長女の誕生を祝って佳子さんの実家の祖父母から届けられた。「戦中戦後の混乱期を必死で生きた祖父母にとって、平和な時代に生まれたひ孫が、すこやかに育ってほしいという願いは強かったと思います」
向日町の三宅家具製造では、三宅美佐保さん(68)が嫁入り時に持参した人形を飾った。顔立ちがすっきりと細い。「後の時代になると、かわいらしくふくよかになる。時代ごとに表情の違いを比べるのも楽しい」。三宅さんが所属するサークル「剪画の会・すみれ草」の作品約20点も掲げられた。
上植野町の手打ちそば処三益庵では、河野多美子さん(61)が20年来続けている手作りのちぎり絵9点を飾った。仕事の合間をぬって食事に駆け込む人たちの心を和ませる。
上植野町の吉川工務店では28日からの公開へ準備を終えた。吉川明子さん(82)が、初めて女の子の孫が生まれた時に「かわいらしい子に育ってほしい」と願いを込めて七段飾りを購入した。「やんちゃな男の子2人を育てたので女の子は、ほんとうにうれしかった。中学3年で、願い通りのいい子に育ってくれました。多くの人におひなさまを見てもらえるのがうれしい」
上植野町の中小路家住宅には、江戸期から現代に至る有職びなや御殿びななどが座敷に展示された。公開初日の22日、矢野サチ子さん(69)=同町=ら3人が琴などの演奏で華やいだ雰囲気を盛り上げた。訪れた女性同士がそれぞれの出身地のひな祭り行事や風習の違いを楽しそうに語り合う。
長岡京市神足の神足ふれあい町家でも、江戸期から昭和期にかけての9組が座敷に展示されている。
西国街道ひな人形めぐりは3月4日まで(一部有料)。開催日・時間は会場によって異なる。
【 2012年02月27日 11時16分 】