子育てに悩む親や高齢者介護の相談に乗るNPO法人「ほっとスペースゆう」が運営する高齢者通所介護事業所「いずみの家」(京都府長岡京市天神2丁目) が10月末で閉所される。利用者や住民が11年間地域の憩いの場だった同施設との別れを惜しんでいる。同NPOの工藤充子理事長(72)は11月に利用者 の人生や培った方法をつづった本を出す予定で「経験を形として残し、高齢者が住み慣れた場所で過ごせるよう手助けしたい」と話している。
同施設は高齢者と子どもがいきいきと過ごせる場を提供しようと、2003年に同市調子で活動を開始。利用増とサービス強化のため08年に現在地に移転した。借り上げていた民家との契約が切れ、代替地が確保できないため活動休止を決めた。
退職した保健師や保育士、栄養士など専門職出身者を中心にマンツーマンに近いサービスを実現し、1日8~9人の利用に対応している。病状や体調に応じた 料理を提供するなど通常のデイサービスよりきめ細かい介護を行う。工藤理事長は「本人がしたいことを尊重する。一人一人が『家主』だ」と話す。
25日には利用者10人を招いてお別れ会を開き、音楽に合わせて歌ったり、楽器を鳴らすなどして最後のひとときを過ごした。利用者や職員の中には時折涙 を見せる人もいた。7年間利用している石井正吉さん(101)=長岡京市梅が丘=は「まるで家にいるみたいだった。もっと続けてほしい」と漏らした。近く で認知症治療を行う医師野々下靖子さん(79)は「地域で一番質のいい介護をしていた場所で本当に残念だ」と話していた。
最終更新:10月30日(木)10時9分