
同住宅は昨年9月、当主から市へ無償で寄贈された。その後、近隣住民から落ち葉が多いとの苦情が市にあったため、今月5日から市内の業者に依頼して枝切りを行った。
「葉をすいて樹木を一回り小さくするつもりだった」と市。ところが、業者は枝を切って全ての葉をいったん落とし、新芽が生えるのを待つという方法をとった。結果、クスノキは「丸刈り」の状態となり、地元の一部住民が「情緒ある景観が台無しだ」と市に詰め寄る事態となった。
府文化財保護課によると、クスノキ自体は文化財ではないため、枝切りしたことに問題はないという。だが、クスノキが再び豊かな緑を取り戻すには数年はかかる。それまではさみしい姿のままだ。市は「業者と意思疎通を欠いた部分があったかもしれない。反省している」と認める。
そもそも、中野家のクスノキが単なる庭木にとどまらず、旧家の趣を長年、ともに醸し出してきた存在だと思いを致すことはできなかったのだろうか。そんな想像力があれば、「丸刈り」は防げたのではないだろうか。
長岡京市は、豊かな緑やたくさんの歴史遺産に恵まれている。そんな日常の風景の大切さはややもすると、それが欠けた時に初めて気づきがちだ。市にはいくばくかの想像力を持って、まちづくりに当たってほしい。
【 2015年10月21日 18時20分 】