購読している月刊誌「選択」には、米国ボストン在住の内科医大西睦子氏が、「不養生のすすめ」と題するユニークな記事を連載していた。大いに関心あって、毎号記事を楽しみにしていたが、昨年第33回(2019年12月1日発行)の最終記事「医者と『薬依存』から抜け出せ」をもって、連載は終了した。
最終記事では、医師と薬を過信し過ぎる患者の問題点を指摘し、高齢患者は何のために医者にかかり薬を飲むのかを、一度じっくり考えてみるべきという提言があった。
(以下引用要約)
高齢の患者は医師と薬を過信し、医師はまずいと知りながらも面倒を避けて、不適切な薬の処方を続けるという問題がある。
高齢者に複数の薬剤を処方した場合の影響を予見するのは困難である。薬理学の教科書では、相互作用に多くのページを割いているが、それは2剤の相互作用までで、3剤以上の薬の相互作用は書かれていない。6つもの薬を飲めば、どんな副作用が起こるか想像がつかない。
(以上引用要約)
提言に対する反応は想像できる。じっくり考える高齢者などほとんどいないだろう。人は長く生きれば生きるほど、この世に執着するものだ。高齢者は、少しでも長生きがしたいのが本音であろう。だから医師と薬に依存する。医療の限界を理解しない人々は、薬剤の相互作用は医師や薬剤師が考えてくれているはずと思って疑わない。現在服用している薬をやめるのが怖いのは、誰もが同じだ。
大西医師は、高齢者は多数の薬を飲むべきでないと言う。服用している薬を減らすだけで、体調がよくなる人は大勢いるのだが、医師の側からはこのことを言えない悩みがあるとも言う。
医師と雖も人間だ。患者に迎合し患者の意向に反したことは言わないこともあるだろう。薬にすがる患者の意向を、尊重せざるを得ない場面は屢々あると思う。
医師と患者との間には信頼関係が必要だが、一般的には患者の方が医師への盲目的信頼に陥り易い。また医師にとって、患者の信頼の有無は大切だが、それが治療を左右することはないだろう。
昨日出会った知人は、11種類もの薬を服用していると云った。彼は80才近いが、40代で心筋梗塞を発症して以来、その治療薬を服用している。近年腎臓にも支障が出て、2つの診療科の診療を受けていると云っていた。
医師と薬への依存を脱することは、高齢患者にはとても困難なことのように思う。患者は馴染みの医師の診察を受けることで、大きな安心を得ているのだから。
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