珍味と言われる酒の肴(前菜)を挙げ始めればキリがない。敢えて3つに絞って、私が偏好している食品に順位をつけてみると、トップスリーは次のようになった。
①焼きくさやの千切り②鮒寿し③鰹の塩辛
①は新島産②琵琶湖産③は高知産
いずれも、強烈な匂いで、敬遠されている。
この3つうちのどれかがあれば、酒のアテはほかに要らない。もちろんそれは日本酒を対象としてのことだが。この手の食品を偏好するのは、一種の老化現象かもしれない。これらの動物性発酵食品は、相当古くから日本人が食べ続けてきた保存食品であるが、子どもは好まない。
これらは前菜だから、ごく少量しか摂らないが、口にすると滋味が口内に染み渡り、独特の発酵臭が鼻腔に抜けると脳髄が痺れる感じがする。我ながら困ったものだと思っている。
問題は妻がこの三種の肴の匂いを極端に嫌悪していることだ。悪寒からヒステリーが誘発される危険があるから、当人の前では絶対に食べない。当人は、これらの臭いが他の食品に移ることを怖れ、冷蔵庫に入れるときは、厳重に幾重にも封入する。
当人の外出時とか入浴中に、コソ泥のように冷蔵庫から出して賞味するのが精一杯だ。食後は酷寒の季節でも居室の窓を開け放ち、空気を入れ替える。まるで高校の頃のタバコの隠れ喫みのようである。
何しろシュールストレミングという、臭さでは世界的に知られた発酵食品を食べた経験があるから、匂いの強い食べ物には些かも怯むものではない。
動物性食材で乳酸発酵している珍味と聞けば、率先して賞味したくなるのは、マニアの域に入っているのかもしれない。皆が避けるから却って賞翫する、子どもじみた衝動もある。
発酵食品への偏好は、年寄りの熱湯好きと、根底において変わらないものかもしれない。
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